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ハーランドは一見、近所の中学生だが…“若き超高速軍団”ドルトムントはバイエルンを倒せるか
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/11/16 06:00
昨季、ザルツブルクとドルトムントで強烈な輝きを放ったハーランド。若き新星が居並ぶドルトムントは今も魅力的だ
練習からシュート性のパスを打ち込んで
ドルトムントのファブレ監督が志向するメソッドは、ウォーミングアップでの選手たちの所作にも表れていました。
ビーレフェルト戦ではベンチスタートだったレイナ、ヘイニエル、ゲレイロらがハーフタイムにトライアングルでパス交換していたのですが、パスのほとんどがレーザービームのような鋭さなのです。しかも、3人の立ち位置は終始変わりませんでした。
つまり、彼らは受け手の足元へ正確にシュート性のパスを“打ち込んでいた”のです。おそらく今の彼らの力からすれば、相手プレッシャーを受けない状況下ではこれくらいの芸当は朝飯前という認識なのでしょうね。
バイエルン戦、えっと思うほどミスが
それを踏まえて『デア・クラシカー』を観たのですが、一変して、ドルトムントのパスミスが目立ちました。「えっ!?」って思いましたよ。ビーレフェルト戦で見せた正確性やスピードに冴えがないのですから。
左SBで先発したゲレイロがキョロキョロと周囲を見渡した挙げ句に忙しなく左足を振り抜き、そのボールがサイドラインを割っていったシーンを見たときは思わず、「アンタ、この前のウォーミングアップでは凄まじいパスワークを見せていたじゃん!」と心の中で叫んでしまったほどです。
改めて、バイエルンの攻守両面に渡る迫力に驚愕しました。
あれほどまでのスピードと正確性を誇るドルトムントの選手たちが、ピッチ上で平静さを保てないでいる。ゲレイロがパスミスしてしまうのは対面のコマンと、横方向から圧力を掛けてくるミュラーのプレス&チェイスが凄まじいからで、パスコースを遮断された中で目前に迫る相手に対し「ギブアップ」してしまったのだと思います。
フリック体制下のバイエルン最大のストロングポイントは、前線の守備にあると思います。彼らは敵陣でボールを失った瞬間に高速で守備へ移行し、各ポジションが連動しながらボールホルダーを囲い始めます。
特に相手バックラインへの包囲網は理路整然としていて、1トップのレバンドフスキのファーストディフェンスを合図にウイング、トップ下、セントラルミッドフィルダーのが緻密に相手のパスコースやドリブルでの避難経路を消してしまいます。進退窮まった相手はアバウトなクリアやフィードを選択するしかなく、そのボールを回収したバイエルンの面々は再び敵陣でビルドアップしてゴールへ迫るのです。