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久保建英に「え、これホント小学生?」から約5年 永里優季、“男性とサッカーできる”心身の秘訣
posted2020/11/05 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Getty Images
男性の中でプレーする女子サッカー選手――人々の価値観をアップデートするような行動を取っている永里。男性とともにサッカーをプレーするために、どのようなことを考え、何を積み上げてきたのか? 全3回(#1、#2はこちら)にわたるインタビューで解き明かしていく。
――男子サッカーチームでプレーするにあたって、「心身ともにいけるかなという状態になった」ということでしたが、「身」の部分は、文字通り身体であり、プレーということになると思います。2012年から中西哲生さんのパーソナルトレーニングを受けているそうですが、中西さんとの出会いは大きかったですか?
「それは、確実に大きかったです。出会ってなかったら、男子チームへの移籍を決断できなかったと思います。もともと私は技術的にうまい選手ではなくて」
――若い頃はもっとガムシャラなストライカーでしたね。
「ボールが来そうなところに飛び込んでワンタッチで決めたり、何とか頑張ってボールをキープして、っていうプレースタイルだったんですけど、出会ってからは技術に目を向けるようになった。それって最初は骨の折れる作業だったんです。もともと身体を器用に動かせるタイプではないので。それに、哲生さんのトレーニングは、ゆっくり身体を動かしたり、細かく動かしたりして、一つひとつ分解してやっていくので、最初の頃は疲労困憊でした。毎回、全身が筋肉痛になるし。でも、回数を重ねるごとに上手くなっていくことが実感できたんです。自分でも身体に関する知識を深めようと思って勉強するようになりましたし」
肋骨、背骨も1つ1つ使えるように
――腸や耳に関する本や、ピアニストの脳に関する本など、課題図書を挙げたりするんですよね。
「それも全部読みました。そうしないと、言っていることの概念が理解できないので。ただ、いくら理論を理解しても、それを実現できる身体にしないと体現するのは難しい。最初の頃は、そうした身体ではなかったんですよ。例えば、前側を緩くして背中側を使えということだったり、肋骨を1本1本緩めて、背骨も全部1つ1つ使えるようにすることだったり。重心の位置を高くするのも日常生活から意識してやらないと、そういう身体になっていかないんですけど、15年にスポーツトレーナーの中野崇さんと出会ったことで、効率的に体現できる身体になっていったんです」