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“大混戦”全日本大学駅伝で見えた3強「駒大、東海大、青学大」の課題とは
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2020/11/02 17:02
ゴール直前で東海大・名取燎太(左)をかわし、前に出る駒大のアンカー・田澤廉
ひとつの負債を他のメンバーがカバーし、田澤で勝負をつけることが可能になった。
東海大も同じく2区で、昨年は5区を走った市村朋樹(3年・埼玉栄)が区間19位の大ブレーキで総合17位にまで後退したが、序盤だったことで取り返しがついた。3区でエースの塩澤稀夕(4年・伊賀白鳳)が区間2位、4区で1年生の石原翔太郎(倉敷)が区間賞の走りで戦線に復帰、6区の長田駿佑(3年・東海大札幌)がトップに立って一時は主導権を握った。しかし7区で、経験豊富な西田壮志(4年・九州学院)が伸びを欠いて青学大に先行を許し、駒大が2秒差で迫ってきたことで、アンカーの名取燎太(4年・佐久長聖)の負担が大きくなってしまった。
そして青学大にいたっては、2区で近藤幸太郎(2年・豊川工)が区間13位、6区では山内健登(1年・樟南)が区間9位ながらもライバル校に抜かれ総合6位まで番手を下げてしまう。
それでも5区で昨年の全国高校駅伝で1区を制した佐藤一世(1年・八千代松陰)が区間新、7区で主将の神林勇太(4年・九州学院)が鬼神のごとき走りでトップに立ち、後続に40秒ほどの差をつけるなど、負債を返済し、貯金を作るところまで持っていった。ところが、エースでアンカーの吉田圭太(4年・世羅)が思わぬブレーキで、駒大、東海、明治に抜かれ4位に終わった。
原監督「デコボコ駅伝」
3強の中で、駒大が優勝を手繰り寄せられたのは、エースの田澤を負債の返済に充てるのではなく、優勝に直接結びつく「貯金」に使えたことだろう。その意味で、3区から7区までの選手がミスなくつなぎ、田澤につなぐまでにほぼ借金の返済を終えていたことが大きい。
対して東海大は塩澤、石原が借金の返済に追われ、後半に入っても貯金を作る流れを作ることが出来なかった。
そして青学大は、原晋監督が「デコボコ駅伝」と評するように、負債を作っては返し、貯金を作ったかと思うとすぐに新たな負債を背負い、流れを作れなかった。それでも7区で神林が貴重な貯金を作ったが、エースの吉田が競り合いに負けてしまっては勝機がなかった。
なぜこれほど「ミス」が多かったのか?
ミスが起き、エースが自分なりの仕事をすれば順位変動が激しくなり、レースとしては面白くなる。見方を変えると、3強にとって今回は「ミス」をしても勝てるレースだった。
そのなかで、エースが貯金を作ることが出来たのは駒大だけだった、ということになる。