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井上尚弥、圧巻勝利に「パッキャオを彷彿」の賛辞 4団体統一へ、モンスターの大河ドラマは第2部突入 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2020/11/02 11:50

井上尚弥、圧巻勝利に「パッキャオを彷彿」の賛辞 4団体統一へ、モンスターの大河ドラマは第2部突入<Number Web> photograph by Getty Images

マロニー戦で圧巻のラスベガス・デビューを果たした井上尚弥。4団体統一へ、戦いは新たなステージに突入する

火を噴いた、モンスターの右ストレート

 劣勢にも、双子の弟アンドリューと兄弟世界王者を狙うオーストラリア人の心は折れず、このラウンドはフットワークを使って何とかしのぎ切る。井上は7回、強引に攻めるのではなく、逆にややペースを落としてスタート。静かにギアを上げるとジャブを立て続けに打ち込み、フィニッシュへの伏線を作った。そしてラウンド終盤、マロニーがワンツーで踏み込んできたところに、モンスターの狙い澄ました右ストレートが火を噴く。挑戦者が「グシャリ」と音が聞こえそうな姿でヒザから崩れ落ちた。試合後、井上が「フィニッシュのパンチは納得のいく形だった」と自画自賛する幕切れとなった。

 この試合がこれまでと少し異なる印象を与えるのは、井上の技術をしっかりと堪能できたからにほかならない。これまで井上は序盤にKOする圧倒的なインパクトで世界にその名を知らしめてきた。始まりは2014年のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦の2回KO勝ち。バンタム級王座を奪ったジェイミー・マクドネル(イギリス)戦から3つの世界戦はそれぞれ1、1、2ラウンドで試合を終わらせた。

 そして昨年11月、WBSS決勝のノニト・ドネア(フィリピン)戦は序盤に眼窩底骨折を負い、打ちつ打たれつの激闘を演じた末の判定勝ちだった。速攻も激闘も悪くはないが、やはり起承転結のシナリオに沿った勝利の持つ説得力は大きい。この日、井上の本当の強さが、本来のスタイルがよく伝わったと思う。

「イノウエはスペシャルだ」

 アメリカで試合の模様を中継したESPNの解説者、元2階級制覇王者のティモシー・ブラッドリー氏は「スピード、正確さ、カウンターパンチの能力、彼はすべてが違っていた。イノウエはスペシャルだ」とモンスターのパフォーマンスに舌を巻いた。20年にわたって世界のトップに君臨した6階級制覇王者、マニー・パッキャオ(フィリピン)と3度対戦している同氏は「パッキャオを彷彿とさせる」と時代を築いたスーパースターとモンスターを比較した。

【次ページ】 4団体統一へ。井上尚弥の物語は続く

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