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井上尚弥、圧巻勝利に「パッキャオを彷彿」の賛辞 4団体統一へ、モンスターの大河ドラマは第2部突入
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2020/11/02 11:50
マロニー戦で圧巻のラスベガス・デビューを果たした井上尚弥。4団体統一へ、戦いは新たなステージに突入する
重なる不安要素にも心はブレなかった
圧巻の内容に忘れてしまいがちだが、試合を迎えるにあたって不安がなかったわけではない。1年ぶりの試合、コロナ禍による練習環境の変化、眼窩底骨折が癒えて初めての試合、初めてのラスベガス、度重なる試合の延期、そして経験したことのない無観客試合……。それでもそばで練習を見守り続けた大橋秀行会長は、井上の心がブレる姿を一度も目にしなかったという。
「コロナの影響で試合が延期になっても泣き言とか一切ないんだよね。本当に淡々と練習し続ける。なんて言うか、練習が生活の一部になってるんだろうね。だから感情が入るとか、入らないとかの問題じゃない」
4団体統一へ。井上尚弥の物語は続く
試合後、井上は「WBC、WBOのチャンピオンをターゲットにしていきたい」と4団体制覇をあらためて口にした。次戦はIBFが義務づける指名試合になる可能性もあるが、2021年の目標が史上5人しか達成していない4団体統一になることは間違いない。
4月に対戦が決まりながらコロナ禍で流れたWBO王者、ジョンリール・カシメロ(フィリピン)はマロニーと違って野性味が持ち味のハードパンチャーだ。カシメロが盛んに井上を挑発していることもあり、3団体統一戦が実現すれば大きな盛り上がりを期待できるだろう。
WBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)はクレバーなサウスポーの技巧派で、現地時間12月12日にドネアとの指名防衛戦を控えている。井上の相手が昨年11月に井上拓真に勝利しているウバーリになれば、統一戦のテーマに弟の敵討ちというストーリーが加わる。ドネアが相手になれば、前回の試合で眼窩底骨折させられた相手と因縁の再戦ということになる。
アメリカの最大手プロモーション、トップランク社と契約して初めての試合で100万ドル(約1億500万円)のファイトマネーを手にし、極めて良質なボクシングを本場のファンに提供してみせた井上。モンスター主演の大河ドラマは国内を舞台にした衝撃の第1部を終え、主な舞台を海外に移した怒濤の第2部に入った。
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