プレミアリーグの時間BACK NUMBER
攻撃+手堅い“師匠モウリーニョ風” 2年目ランパード・チェルシーの「勝ちたければ守れ」
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/11/03 06:00
チェルシー2年目を迎えたランパード監督。名将への道を着々と歩んでいる
モウリーニョ体制の2004年には……
そんな中で迎えたマンU戦。昨季こそ得失点差で3位と上回ったが、リーグでの直接対決で計6失点、2敗を喫した相手との対戦だった。セビージャ戦以上に負けるわけにはいかない一戦を無失点に抑えれば、自信を得られる試合でもあった。
チェルシーには、マンUを相手にホームで守備を固めて自信を手にした過去がある。
2004年8月、半世紀ぶりのリーグ優勝へ向けた第一歩を踏み出した、第1期モウリーニョ体制下での開幕戦(1-0)のことだ。
見栄えの良い試合ではなかった。しかし集中力の高い守りから、カウンターで決勝点を奪った。この一戦が、モウリーニョ就任で芽生えていた優勝への希望を自信に変えたことは間違いない。当時のインパクトは、個人としてはFKで相手を脅かした程度ながら、己の仕事を全うしたランパード自身も忘れていないはずだ。
モウリーニョ時代を懐かしむわけでない
監督として臨んだマンU戦は1ポイント獲得にとどまった。
国内各紙のスポーツ面に掲載された写真を見れば――相手CBのハリー・マグワイアに腕を回されてヘディングを阻止されたセサル・アスピリクエタが、その苦しそうな表情といい体勢といい、まるでアントニオ猪木にコブラツイストをかけられた相手選手のようだった。それを見る限り、PKによる1点があるべきだったかもしれない。
そもそも昨季から数えて4度目の2試合連続無失点ではあるが、今回は意識して臨んだ指揮官の姿勢からして歓迎できる。
それは、チェルシーが「1点取れば勝ち」と思わせるほど強かったモウリーニョ時代を懐かしむ気持ちからではない。
ランパードの「我がチェルシー」像は、プレミア監督としての初陣となったマンUとの昨季開幕戦(0-4)で、アウェイながらハイラインで攻めにいった姿勢からも明らかだ。
そんな指揮官が、基本理念を簡単に曲げるはずはない。だが、そのランパードが守りを意識させたのである。就任以来、自軍の基本要素の1つとして「適応能力」を挙げてきた指揮官は、選手に求めるだけでなく自身にも要求する気になったわけだ。筆者の感覚では、「ようやく」と付け加えたい。