プレミアリーグの時間BACK NUMBER
攻撃+手堅い“師匠モウリーニョ風” 2年目ランパード・チェルシーの「勝ちたければ守れ」
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/11/03 06:00
チェルシー2年目を迎えたランパード監督。名将への道を着々と歩んでいる
補強予算と同様に高まるプレッシャー
昨季終盤、トップ10内最少の39得点だったシェフィールド・ユナイテッドに惨敗(0-3)した時点で、その気になってほしかった。だが、ランパードのチェルシーは攻撃タレントの獲得に計1億5000万ポンド(約200億円強)を費やした夏を経て、今季も点を取っても取られ続けた。
変則的で短いコロナ下のプレシーズンでは、積極補強後のチーム作りを進めるだけでも難しい部分があっただろう。新戦力を含む複数の主力は怪我から回復中でもあった。手探り状態での今季開幕だったことは、4-2-3-1を基本としながら、ゼロトップ的な4-3-3も試されたシステム選択からも窺える。
とはいえ、補強予算と同様に高まったトップ4フィニッシュへのプレッシャーと、優勝争い参戦への期待を考えれば、5節が取りこぼし2試合目という滑り出しは許容範囲外。失点への歯止めは火急の課題と言えた。
チアゴ・シウバが3バック中央に入り
対処を迫られたランパードは、翌マンU戦でシステムを3バックに切り替えた。昨季も効果的オプションではあったが、今季初採用には現状のベストDF陣を配する意味合いもあっただろう。
3バックの中央は新CBチアゴ・シウバ。パリ・サンジェルマンからやって来た36歳は、個人のミスと組織の乱れが目立つ最終ラインに欠けていた「冷静沈着」の体現者である。マンUが終盤に投入したエディンソン・カバーニへのシュートブロックを含め、鋭い読みと豊富なノウハウを生かして的確な守りを繰り返した。
左CBはクルト・ズマ。ブラジル産の手本を横に学びつつ、フィジカルとスピードでサポートできる。26歳のフランス人CBは、4バックの中央で初めてコンビを組んだ4節クリスタルパレス戦(4-0)からドタバタ感が弱まった印象がある。逆サイドには、集中力の高い守りが売りのアスピリクエタが入った。
アスピリクエタにとって、マンU戦は今季プレミア3度目のスタメンだった。4バックの場合は指揮官が高く評価するリース・ジェイムズに先発を譲る試合も増えている。それでも攻撃力で勝る後輩が右ウイングバックに回る3バックの際は、31歳になる「守備の人」がキャプテンマークも巻いてピッチに立つ。