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攻撃+手堅い“師匠モウリーニョ風” 2年目ランパード・チェルシーの「勝ちたければ守れ」
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/11/03 06:00
チェルシー2年目を迎えたランパード監督。名将への道を着々と歩んでいる
守備意識の変化はシステムだけでない
守備陣の背後では、新GKエドゥアール・メンディがゴールを守る。レンヌから新加入のセネガル人守護神だ。
パリに続いて西ロンドンでも最終ラインの要となるT・シウバとともにメンディにも言語の壁がある。それだけに、ズマとアスピリクエタは英語以外の共通言語を持つ味方でもある。スペイン人だがフランス語を理解する後者は、セビージャ戦の観戦プログラムにおいて「状況によってはフランス語でいいからな」と新加入のGKに告げたことを明かしている。
守備意識の高い采配に伴う変化は、システムだけではない。
攻撃的な右SBジェイムズは、攻め上がりに軽くブレーキを掛けた。それでも、機を見て上がってはクロスを供給しようとしたセビージャ戦と、ウイングバックとしても後方での仕事を怠らなかったマンU戦の双方で、チーム最高クラスの評価を与えてもよい。
また、左SBベン・チルウェルも、新たなCK担当として良質のキックを披露しながらも、攻撃参加は控え目だった。
レスターからの移籍時に抱えていた怪我も癒えた23歳は、後方スペースのケアを疎かにしない。攻撃過多なマルコス・アロンソより安定性の高い新SBを買い入れたと確信させたマンU戦では、両ウイングバック、中盤底のエンゴロ・カンテとジョルジーニョ、トップ下から頻繁に下がってきたカイ・ハバーツの5名体制で、中盤に包囲網を敷いていた。
“内なるジョゼ”が顔を覗かせても
今夏7100万ポンド(約96億円)の移籍金で獲得したハバーツの下がりすぎを懸念する声も聞かれたが、この戦い方が今後の基本となるわけではない。“内なるジョゼ”が顔を覗かせはしても、ランパードが持つ攻撃志向は変わらない。
現在モウリーニョが守備の立て直しに取り組んでいるトッテナムでは、同時にハリー・ケインとソン・フンミンのコンビが絶好調。識者間でも今季4位以内を有力視する見方が強まっている。となれば、トップ4を争ううえでは守備の弱点克服への自信を強め、対戦相手や戦況に応じて手堅く戦う術を身につける取り組みは有効だ。