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ドラフト2020、クジは外れでも採点が高い球団は? プロ野球史上NO.1の“超俊足”や早川隆久の真の実力
posted2020/10/28 19:21
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kyodo News
日本ハム、ソフトバンクなど、近年の“ドラフト巧者”が揃うパ・リーグ各球団は、新型コロナウイルスの影響で実力評価が難しい2020年アマチュア球児をどう評価したのだろうか。多くの識者が実力ナンバーワン投手と認める早川隆久(投手・早稲田大)に入札したのはセ・リーグのヤクルト以外はロッテ、西武、楽天のパ・リーグ勢。この時点で早川はパの球団に入るのではないかと思った。パ6球団の指名選手を見ていこう。
◇オリックス 80点◇
× 佐藤輝明(内野手・近畿大)
1位 山下舜平大(投手・福岡大大濠高)
2位 元謙太(外野手・中京高)
3位 来田涼斗(外野手・明石商業高)
4位 中川颯(投手・立教大)
5位 中川拓真(捕手・豊橋中央高)
6位 阿部翔太(投手・日本生命)
<育成>
1位 川瀬堅斗(投手・大分商業高)
2位 辻垣高良(投手・学法松韻学園福島高)
3位 宇田川優希(投手・仙台大)
4位 釣寿生(捕手・京都国際高)
5位 佐野如一(外野手・仙台大)
6位 古長拓(内野手・BC福島)
2000年以降の20年間でAクラスはわずか2回。それでいて、現在のオリックスからは勢いを感じる。今回の指名でも1位で入札した佐藤輝明(近畿大→阪神)を抽選で外しながらも勢いは健在だったと思えてしまう。
13~16年までは4年続けての単独指名で吉田一将(JR東日本)、山崎福也(明治大)、吉田正尚(青山学院大)、山岡泰輔(東京ガス)という大学生&社会人を獲得し、17年は社会人の田嶋大樹(JR東日本)を西武と競合して抽選勝ち。従来の即戦力志向が目立った。
しかし、これを成功法則と考えず、18年は小園海斗(報徳学園高)、19年は石川昂弥(東邦高)と将来有望な高校生を狙い、抽選負けを喫してもそれぞれ太田椋(天理高)、宮城大弥(興南高)を獲得。今年も佐藤で負けたが、山下舜平大に落ち着いた。この戦略が失敗と思えないのは、大エースに成長した山本由伸をはじめ、山岡、田嶋、榊原翼、張奕などイキのいい若手が揃い、さらには高校卒選手の存在もポツポツと目立つからだ。クジ運が悪くても戦略があれば上位に君臨できる。それは過去に巨人やソフトバンクが証明している。
有望高校生がズラリ、勢いを感じる
1位山下は高校球児の実力を測る場として与えられた合同練習会に出場。参加選手の中でストレートが150キロを計測したのは彼一人だった。さらに落差の大きいカーブを交えた緩急が強烈な印象を残し、スカウトの目を釘づけにしていた。
さらに佐藤を取り逃がしたことにより2位元謙太、3位来田凉斗という“大物”高校生野手を指名した。チーム内を見れば一軍未満ながら宗佑磨、佐野皓大、西浦颯大、太田椋、紅林弘太郎など将来性が期待される高卒選手が控えている。こういうチームが変革する気配を“良いこと”と認識し、その方向に迷いなく向かっている現況が私には“勢い”として感じられるのだろう。