甲子園の風BACK NUMBER
明石商vs.智弁和歌山にプロも注目。
今年の“練習試合”は真剣度が凄い。
posted2020/07/11 11:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
たかが練習試合、ではない。特に今年は。
7月4日に行われた明石商と智弁和歌山の練習試合を取材して改めてそう感じた。
新型コロナウイルスの影響で中止となった夏の第102回全国高校野球選手権大会の地方大会に代わる各都道府県の独自大会が、すでに始まっている地域もあるが、各地で練習試合も行われている。
例年もこの時期の練習試合は、夏の大会に向けた重要な調整の場だったが、今年は春から長い自粛期間があった分、実戦感覚を取り戻すための重要な機会となっている。
また、春のセンバツや春季大会といった公式戦が中止になったため、プロ入りや社会人野球、野球での進学を目指す高校生にとっては、練習試合も公式戦と変わらないアピールの場であり、またリベンジの場であり、状況が許せば家族に観戦してもらえる場であり、そして仲間と野球をやっているという実感を噛みしめられる場でもある。
明石商のグラウンドにスカウトが30人。
明石商のグラウンドで行われた智弁和歌山との練習試合は、ドラフト候補選手を擁する強豪同士の好カードということで、NPB9球団の30人近いスカウトが訪れた。
まずそのスカウト陣をうならせたのは、先発して5回を投げた明石商のエース・中森俊介だった。
1年夏から甲子園に出場し、2年春、夏ともに甲子園ベスト4入りに貢献した最速151キロ右腕は、今年の高校生投手のドラフト候補の目玉と言える存在。182cm、86kgのがっしりとした体格で、ボールに力がある。
変化球も非常に多彩で、一つひとつの球種の精度も高い。投球をバックネット裏から見守ったスカウトは、「器用すぎて球種がわからへん」と舌を巻いた。