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放送中止、ボディタッチで抗議……ブンデス初の女性主審・ビビアナが実力で跳ね返してきた“性差別”
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2020/10/21 11:00
日本が優勝したドイツ女子W杯、翌年のロンドン五輪で主審を務めたビビアナ・シュタインハウス
ボディタッチで訴えられても“スマートに対応”
偶発的に選手の手が胸にあたってしまったことが大きく取り上げられたり、「女性の審判なんていらない」と選手に発言されたこともあった。なかでも、筆者が一番覚えているのは14年9月のボルシアMG対バイエルン戦でのことだ。
0ー0で迎えた試合終了間際、ロスタイムの短さに不満のあるペップ・グアルディオラは第4審判を務めていたシュタインハウスの手を握り、肩に手を回し、ボディタッチで訴えた。シュタインハウスはさらっとその手を振りほどき、試合進行を妨げることなく場をおさめた。この時の映像はスペインメディアが繰り返し流していた。おそらくはペップの情けなさについて議論している映像が動画配信サービスに投稿されていたこともあった。
ちょっと気持ち悪いと思わざるを得ない態度をペップほどの監督がとるなんて、とがっかりしたのと同時に、シュタインハウスのスマートな対応にうなったことを本当によく覚えている。
なかなか続かない“女性審判員”の道
シュタインハウスは女性審判員の道を切り開いたのは確かだが、後続はなかなかいない。2部はおろか3部の審判員リストを見ても女性は少ない。能力があり、なおかつこの仕事を希望する人材がコンスタントに出てくるわけではないのだ。それでも、そんな人材が出てきた時にはドイツサッカー界の扉は開くのだろう。そしてシュタインハウスほどは特別視されずに済むかもしれない。
そして思うのは、日本はどうだろうかということだ。果たして有望な人材が出てきたときにその芽を潰さずに後押ししてあげることはできるだろうか。Jリーグを女性の主審がさばく日を、気長に待ちたいと思う。