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「野球を面白いと思えなかった」DeNA・山下幸輝の意識を変えた“2人のアスリート”とは 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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posted2020/09/15 11:40

「野球を面白いと思えなかった」DeNA・山下幸輝の意識を変えた“2人のアスリート”とは<Number Web> photograph by KYODO

ラミレス監督と抱き合うDeNA・山下幸輝(2018年撮影)

「自分は恵まれている」2人の“ある選手”との出会い

 そんなオフ、面白い出会いがあった。懇意にしているスポーツメンタルコーチの鈴木颯人氏の紹介で、陸上十種競技の右代啓祐とプロサーファーの大原洋人と食事をする機会があった。右代は日本記録保持者であり、また大原は2015年に世界の有力選手が参加する伝統あるUSオープンで日本人として初めて優勝したトップ・コンペティターだ。東京オリンピックの日本代表候補にも名を連ねている。

 日本を飛び出し世界を相手に戦う2人の話は新鮮だった。一方で、メジャー競技とはいえない彼らの日常は、プロ野球(NPB)の選手からすれば想像を絶するものでもあった。自分でスポンサーを集めたり、自費で世界を転戦するなど経済的な負担はもちろん、練習場所の確保など苦労の連続であることを知った。

「本当、自分は恵まれた環境にいるんだなと感じたんですよ。こんなのでプロだなんて恥ずかしいと思ったし、このままじゃいけないって。2人の話を聞いて、すごく感じるものはありましたね」

 さまざまな種目をこなす高い身体能力を持つ右代からは、より高みを目指すなら自分自身の体を自由自在に使えなければいけないと諭された。

「自分の体を使えない人が、バットとかを持っても上手くいかないよって。例えば簡単なことですけど逆立ちをして、それを動画に撮ってイメージ通り動けているのかチェックしたりしています。大事だなと実感しましたし、自分の体が変わってきたひとつの要因になっています」

壁にぶつかったとき立ち返れる場所

 闇の中で見た光明。自分のなかで変化の兆しが鮮明になっていく。次に己の能力を伸ばすため山下が目を付けたのはウェイト・トレーニングだった。

「野球選手として自分の取り柄ってなにかなと考えたとき、正直、思い浮かばなかったんですよ。けど唯一、ウェイトだけは自信があったんです。ただ、これまで中途半端にやっていた。下半身はあまり好きじゃないからやらなかったり……。だから、ここは自分を変えるためにも目いっぱいやろうって。とくに自粛期間中は徹底的にやりましたね」

 ハードなウェイトを課すと体はみるみるうちに変わり、自粛期間中だけで体脂肪率12~13%をキープしながら体重は7㎏も増えた。山下はパワーがついたことを実感した。

「打球も明らかに飛ぶようになりましたし、何より調子のいい時期を長く維持できている感覚があります。あと不思議なんですけど、打てなかったとしてもウェイトをすればいいというか“戻れる場所”ができたんですよね」

 壁にぶつかったとき立ち返れる場所。拠り所とでもいうのか、それがあるのとないのではメンタル的にずいぶん違ってくる。心をまっさらにできる場所が山下には必要だった。

 パワーを付け強くスイングできるようになると、山下は技術的な向上も試みる。

「基本的にポップフライが多かったので、とにかく強い打球をライナーで打つことを心掛けました。これまでは何となく振って飛べばいいという感覚でしたからね」

【次ページ】 「野球を楽しめば結果は出るんじゃないか」

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