“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2北九州の点取り屋が必然の爆発。
ディサロ燦シルヴァーノが語る変化。
posted2020/08/28 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
GIRAVANZ
J2ギラヴァンツ北九州が絶好調だ。クラブ記録を更新する8連勝で、J2昇格1年目ながら2位につけている(以下、データは第14節終了時点)。
その快進撃を牽引しているのが、イタリア人の父を持つFWディサロ燦シルヴァーノだ。昨季、法政大学から北九州に加入したプロ2年目のストライカーは、現在J2得点ランキング2位、同1位のピーター・ウタカ(京都サンガF.C.)に次ぐ8ゴールを記録している。
プロ1年目の昨季はJ3の舞台で戦った。リーグ戦26試合出場で7ゴールを挙げてJ2昇格に貢献。しかし、今季の開幕戦はベンチスタートで、わずか4分間の出場にとどまった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるリーグ中断からの再開戦もベンチからのスタート。第3節のFC琉球戦では途中出場から今季初ゴールを決めたが、第7節レノファ山口FC戦までスタメン出場は一度もなかった。
しかし、その琉球戦の1ゴールは爆発の予兆だった。
小林監督から求められた「冷静さ」。
「昨季までの僕はゴールを決めようという気持ちが強すぎて、大事なシーンで余計な力が入り、プレーの精度が落ちていた。落ちて受けるシーンでも、フリーなのに慌てて周りに叩くシーンが多々ありました。でも、昨季終了後の小林伸二監督との面談で、『元気がいいからパワーや前への推進力はあるけど、それ一辺倒になっている。ターンすべきところはターンしたほうがいい』と言われて、なるほどなと思ったんです」
ステージが1つ上がったことで、ディサロに求められたのはゴール前での冷静さ。前線で貪欲にゴールを狙うだけでなく、周りを生かしながら、いかにゴールに直結する仕事を正確にこなせるか。彼が見直したのは集中力のコントロールだった。
「たとえば、集中力が“100”あったとしたら、ここでは“80”、ここは“20”と、抜くところと入れるところのバランスを考えるようになりました」
彼が言う「集中力の調整」は、いわば「体の力み」に直結する。視野を広げ、プレーの選択肢を探している時は“0”に近づく。どんな変化にも柔軟に対応できるリラックスしている状態だ。逆に選択肢を絞り、自分のプレーが明確化された状態は“100”。より研ぎ澄まされているといった感じか。要するに、シュートまでの一連の動きでつける緩急を数値化しているのだ。ディサロの脳内には、常にゲームの世界のようなゲージが映し出されている。