“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2北九州の点取り屋が必然の爆発。
ディサロ燦シルヴァーノが語る変化。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGIRAVANZ
posted2020/08/28 07:00
現在、J2得点ランク2位の8得点を挙げる北九州FWディサロ燦(あきら)シルヴァーノ。巧みな動き出しと正確な左足のシュートが武器のストライカーだ。
法政大では上田綺世と競争。
彼の爆発は決して偶発的ではなく、必然的なものだったと言えるだろう。だからこそ、連続ゴールが止まっても、彼のメンタルは全くぶれない。
「目先の結果に一喜一憂するのではなく、すぐに切り替えられています。フロンターレも連勝が止まりましたし、オルンガ選手(柏レイソル)の連続ゴールも止まりましたから。また一から積み重ねればいいですし、『始まりがあれば終わりがある』というのは世の常ですよ」
ディサロは中学時代から生粋のストライカーとして最前線に君臨。東京・巣鴨に拠点を構える名門・三菱養和SCユース時代は「巣鴨のファンペルシ」と呼ばれた。
だが、進学した法政大では、2学年下の上田綺世(鹿島アントラーズ)の存在により、一時期はセカンドトップの役割に回り、大学4年の夏から秋にかけてはベンチを温める時期もあった。
「ずっとセンターフォワードを本職としてやってきた身として、綺世の得点力は当時の僕よりも優れていたと思う。それは認めないといけなかったし、それに1.5列目という新たなポジションで力を磨こうと思っていました。ただ、意欲的に取り組んでいたのですが、正直コンディションが上がらずにナーバスになっていた時期でもありました。J2のクラブから興味を示していただいているという話も聞いていたのですが、オファーは届かず……。プロに行けないのかなと思い始めた時、正式オファーをくれたのが北九州でした」
北九州に来て1年半、すでに第二の故郷。
季節は11月。当時、北九州はJ3で最下位に沈んでいた。ディサロもようやく法政大で出番を取り戻した時期でもあったため、もう少し他のクラブの動向を見てもよかった。しかし、彼は一切迷わずにオファーを受けることを即決した。
「もう這い上がるだけ、北九州のために全力で頑張ろうと素直に思えたんです。でも逆にその思いが強すぎて、(昨季は)肝心なところで冷静さを欠いていたのかもしれません。それを伸二さんがしっかりと指摘をしてくれたからこそ、今の自分があると思っています。まだ、北九州に来て1年半ですが、もう僕にとって『第二の故郷』になりつつあります。
僕は今季15ゴールを目標としているので、まだ個人としても、チームとしても何も成し遂げていませんし、上にはV・ファーレン長崎がいて、下も詰まっている。(現在リーグ2位とはいえ)まだリーグの3分の1しか消化していませんし、これから5連戦が何度も続くなどハードスケジュールが待っている。これまでやってきたアグレッシブなハードワークを、あぐらをかいてやらなくなったらすぐに(順位は)落ちると思うので、謙虚に、自分の成長にも貪欲にやっていきたいと思います」
ゴールラッシュが偶然ではないことを彼自身が理解しているからこそ、「絶好調」と周りから騒がれても、彼の足は地についている。
「今、伸二さんに言われているのが、『うまく行っている時こそ、もっとやれ』。今こそもっと突き詰めろと。本当にその通りだなと思うし、集中力のゲージという明確な物差しが、仮に調子を落とす日が来たとしても、自分が戻るべき場所になると感じています」
終わりが訪れた時は、原点に戻り、また磨き上げればいい。それはより成長をするために必要な新たな壁でもある。「決して一過性では終わらせない」。北九州の前線で躍動をするディサロのプレーからは、その強い意志をひしひしと感じる。