“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2北九州の点取り屋が必然の爆発。
ディサロ燦シルヴァーノが語る変化。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGIRAVANZ
posted2020/08/28 07:00
現在、J2得点ランク2位の8得点を挙げる北九州FWディサロ燦(あきら)シルヴァーノ。巧みな動き出しと正確な左足のシュートが武器のストライカーだ。
ディサロの頭の中にある数値。
今季初ゴールを挙げた琉球戦。2-0でリードした72分に投入されたディサロは、MF高橋大悟からのパスを受けてゴールを決めた。ここには細かいゲージの調整があった。
本人の言葉をもとに、「集中力のゲージ」を紐解いてみる。
まず味方DFから左サイドハーフの椿直起に縦パスが入った。その瞬間、前線にいたディサロはボールが来ることはないと判断し、相手DFラインとボランチラインの間にフワフワと浮遊するようにポジショニングを取った。ディサロは自分と椿の間には少し距離があることを認識していたのだ。しっかりと周囲の状況を把握できている。集中力ゲージは“10”。
椿はその後、ハーフターンを試みた。ディサロはボールが来ることを想定し、裏に抜け出す準備に移る。集中力のゲージは“50”。だが椿はボールコントロールを誤り、相手のプレスに引っ掛かった。しかし、今度はサポートに入っていた高橋がボールを奪い返した。それを見たディサロはオフサイドポジションから再び浮遊するように相手DFライン上で動き直しを図った。その時、ゲージを“30”に下げていたが、再び裏に抜け出す動きをした瞬間に“100”に引き上げた。理由はこうだ。
「相手にもう1回狙っていることがバレないように戻った。その時に大悟と目が合ったんです。一度、オフサイドポジションに入ったことで、相手の守備陣形を後ろから全部把握していました。自分がフリーになっているのが分かったので、首を振ることなく、大悟からのラストパスをどう受けるか、そこに集中力を100まで引き上げました」
肩の力を抜いて放ったシュート。
この場面、高橋とディサロの間には琉球DF上里一将がいた。ディサロは上里の前を通すスルーパス、足元に来るパスの2つのパターンをすでに頭に入れていた。確かに余計な情報をシャットアウトし、選択肢を絞ることができている。
「(上里の)前を通せば一気に加速をしてダイレクトシュートできるし、足元に来たらワンタッチしてからのプレー選択がベストとなる。あらゆる局面に対応できるようにしました」
高橋の選択は足元へのパス。そのパスが来た瞬間、彼はゲージをあえて“70”まで落とした。GKの動きを見極め、肩の力を抜いた状態でシュートを打つためだ。
「GKの左足に重心があり、ファーを狙っているのが分かったのでニアを狙った」と、利き足の左足で放たれたシュートはゴール隅に突き刺さった。
「昨年までの僕だったら、一度オフサイドポジションに入った時に、そのままそこでプレーに関与しない選択をしていた。相手DFの中間ポジションには戻らなかったと思います」