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ラグビー好きのあなたはどの世代?
「厳しい」から「日本は強い!」へ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAP/AFLO
posted2020/08/27 08:00
2015年W杯の「南ア撃破」は観る人のメンタリティを変える一戦だった。中央には余韻に浸る真壁さんの姿が!
均質化に逆をいく15人の個性。
W杯を経て、ファン、そして選手たちの心持ちには大きな変化があった。ただし、不変のものもある。ラグビーの選手たちの豊かなキャラクターだ。
世界のあらゆるスポーツで、選手の均質化が進んでいる。トレーニング、食事、あらゆる理論がアスリートの理想形を作り出している。
ところが、ラグビーはポジションによって選手の体格が大きく違う。1番と15番では体格も、求められる能力も違う。それだけではない。ポジションごとに「キャラクター」が違うと真壁さんはいう。
「いろんなキャラクターの人間が集まってるのがラグビーのいいところじゃないでしょうか。僕がプレーしていたロックは、世界中でお酒にまつわる話題にこと欠きません。同じFWでも第一列は優しい人が多くて、ごはんが大好き。でも、プロップとフッカーではちょっとだけキャラが違うんです」
BKでは9番が特徴的。古今東西、背番号9はやんちゃで、他のメンバーを叱咤激励する。時には荒い方法で。真壁さんはこんなことを思い出す。
「サントリーやジャパンでチームメイトだった日和佐(篤・神戸製鋼)なんて、ラックで入る位置を間違えると、後ろから蹴ってきますからね(笑)」
長らく日本代表のスクラムハーフを務めてきた田中史朗は、相手のFWに食ってかかっていくことさえ厭わない。
ただし、スクラムハーフは一生、プロップは出来ないし、その逆もまた真なり。
お互い、他のメンバーには出来ない仕事をしながら、ひとつのチームを作る。その風土はこれからも変わらないだろう。
「スター」はバックスが定番だった。
それでもひとつだけ、2019年のW杯を終えて、日本で大きく変わったことがある。第一列の選手がテレビのコマーシャルに出演する時代がくるとは想像すらしていなかった。1970年代から、「スター」といえばバックスが定番だったから。これは、地殻変動だった。
糸井さん、中村選手、真壁さんと話をしながら、改めてラグビーについて話すとアンストッパブルであることを実感した。
今年の秋は、無事にラグビーが戻ってきますように。
そしてまた、ラグビートークが出来ますように。