プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・原監督が吉川、若林に怒った。
結果が全てのプロの心得「体技心」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/08/21 11:40
若手を積極的に起用している巨人・原辰徳監督。ただし、アグレッシブなプレーを見せないと……。
「指導者に求められるのは忍耐と根気です」
そして続く若林も、絶好球に手が出なかった。吉川が倒れた1死二塁で代打に起用された若林のカウントは3ボール。そこでベンチからは「待て」ではなく、再び「打て」のサインが出ていたのである。ところが若林も真ん中の真っ直ぐを見送って、直後のフォークに一塁ゴロに倒れた。
失敗のリスクをベンチが背負って「打て」と後押しした。それにもかかわらず、打席の選手がアグレッシブになれなかった。
「そういうところがまだまだなんだよ」
後にこう振り返った指揮官の言葉は、当然のように少し尖っていた。
「若手を育てるときに、いまの選手たちは上からガミガミと言うだけではかえって萎縮して、力を出しきれない面もある。それだけ指導者に求められるのは忍耐と根気です」
原監督に人材育成のポイントを聞いた時の答えである。
特に野球の世界はすぐに結果がついて回る。そのことが選手への重圧にもなるし、逆にいい方向に進めば限りない自信にもつながる。
ただ、やっぱり大事なのは失敗したときにどう選手にその失敗を理解させて、前向きな方向につなげるようにフォローできるかなのである。
結果がすべてのプロの世界の順番は「体技心」。
「勝負の中では失敗もあるし、様々な困難もある。それでも問題が起こるたびにしっかりと話をして、もう一度背中を押してやることが、ひいてはその選手の力を伸ばしていくことになります。それがチームの若い力を掘り起こし、戦力にしていくために考えなければならないことだと思いますね」
それが原流育成術の要だった。
スポーツや勝負の世界には「心技体」という言葉がある。
しかし原監督に言わせれば、アマチュアと違って、ある意味、結果がすべてのプロの世界の順番は「体技心」――すなわちまず肉体がしっかりしてコンディションが整えられ、そこで身につけた技術をどこまで高められるか。そして最後に問われるのが気持ちの強さなのである。
体と技は日頃の練習や、様々な場面で見極めて、そういう背景を含めて選手は起用される。
そこでどう心を奮い起こしてアグレッシブなプレーができるか。そこからが若手選手たちの問われるところなのである。