プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・原監督が吉川、若林に怒った。
結果が全てのプロの心得「体技心」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/08/21 11:40
若手を積極的に起用している巨人・原辰徳監督。ただし、アグレッシブなプレーを見せないと……。
「精神面がなっていない!」と原監督が怒った。
「あそこで出しても勝負してこないだろうと、というところ。亀井はうちの切り札だから」
もちろん中川に代打が必要だが、確実に勝負をしてくれるシチュエーションで切り札の亀井を出す計算をした。そこで一呼吸を置いた起用になったわけだ。
その期待に「試合時間3秒」で亀井が応え、初球を中前に叩いてサヨナラ劇は決まった。
ただ、この劇的勝利に沸くベンチ裏で、実は原監督は怒っていたのである。
「ホント、ああいう場面でバットが振れない。2人ともメンタルがね……精神面がなっていない!」
試合後にこうやり玉にあげたのがサヨナラの好機に二飛と一ゴロに倒れた吉川と若林の2人の若手選手だったのである。
「ニヤッと舌舐めずりして、投手に向かっていかなきゃ!!」
もちろん監督が怒っていたのは、凡退した結果にではなかった。
実はこの2人の打席でベンチからは、まさに攻めの姿勢を顕にしたサインが出されていたのである。
「ランナー、セカンド。ツーボールで“打て!”のサインを出したのが吉川。ワンアウトでスリーボールになって、やっぱり“打て!”のサインを出したのが若林。ニヤッと舌舐めずりして、投手に向かっていかなきゃ!!」
指揮官が振り返ったように、実は亀井のサヨナラ打が生まれる前に、巨人ベンチは激しく動いていた。
増田が盗塁を決めた時点で、吉川のカウントは2ボール。そこで相手バッテリーが真っ直ぐ系の球種で確実にストライクをとりにくると見切って、ベンチから吉川には「打て」のサインが出されていたのである。
案の定、続く3球目は内角寄りの143kmのストレート。しかしこのボールに吉川は手が出ないで、見逃しのストライクを取られてしまう。そして5球目の真っ直ぐを打ち上げて二飛に倒れ、走者を進めることもできずに凡退してしまった。