プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・原監督が吉川、若林に怒った。
結果が全てのプロの心得「体技心」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/08/21 11:40
若手を積極的に起用している巨人・原辰徳監督。ただし、アグレッシブなプレーを見せないと……。
攻めダルマとなって送りバントを使わず。
実はそんな原流育成術だからこそ、期待の若手に厳しい言葉を投げかけた場面があった。
それは8月13日、ヤクルトにサヨナラ勝ちした東京ドームでの試合でのことだった。
この試合は同点で迎えた9回に、先頭の中島宏之内野手が三遊間を破る安打で出塁すると、すかさず代走に増田大輝内野手を起用。その増田が続く吉川尚輝内野手の2球目に二盗に成功し、2死一、三塁となったところで代打の亀井善行外野手がサヨナラ打を放った試合だった。
ここでの原采配の凄さは2つある。
まず同点の9回に先頭打者が出塁しても、攻めダルマとなって一切、送りバントを使わなかったことだ。
同点の9回無死一塁。普通ならまず送って走者を得点圏にという場面だ。あるいは走塁のスペシャリストの増田に二盗という選択肢はあったとしても、盗塁が成功した時点で、今度こそ送りバントで一死三塁を作りにいく。
ほとんどの監督がこのどちらかの送りバントを選択する場面であり、そうすれば例え無得点に終わっても采配を批判されることはない。
代打の切り札・亀井を温存して、若林を代打に。
しかし、ここで原監督は盗塁と強硬策という攻めの姿勢を崩そうとしなかった。
そしてもう1つが、翌日の新聞等で話題になった9番の中川皓太投手のところで用意していた代打の切り札・亀井を温存。この場面では若林晃弘内野手送り出した代打の順番だ。
ポイントは試合途中に2番に入っていたパーラが足の故障で松原に交代していたことだった。
1点を取られたら負けるヤクルト側の選択肢としては、満塁策まであり2番に入った松原の打順がカギになっていた。