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バルサ粉砕、バイエルンの周到さ。
コロナ禍での“ブロイヒの準備”とは。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/19 17:00
CL史に残る圧勝劇を飾ったバイエルン。それを生み出したチームスタッフの働きも無視できない。
バルサ陣内でボールを奪いきれ。
いつ、誰が、どこで、どのようにプレーすることが最適なのか。
そのためにチームとして取り組まなければならないことはなんなのか。
監督がタスクを課すにあたっては、それによって選手が狙い通り反応してくれることが何よりの前提条件となる。
システム、スタメン、チーム戦術という枠組み以前に大事なことは、どんな状況、エリア、相手でも適応されるプレー指針だ。そこがクリアに定められていて、そのプレー指針が主力だけではなく、全選手に浸透しているかどうか。今のバイエルンは、そこが徹底されている。
あの日、バルセロナを追い込むためにフリック監督が選んだ戦い方の1つは、徹底して相手陣内からボールを奪いに行き続けることだった。
もちろん、複数人でボールを奪いに行くのは、かわされると一気にピンチになる危険性がある。だから、自分たちでボールを奪いに行く以上は、ボールを奪い切らないといけない。もし取れない場合はボールを前へ運ばせず、最低限後ろに下げさせるというのがノルマだ。
レバンドフスキも守備で汗をかく。
ではどうすれば、ボールを奪う可能性を高められるのか。ポイントは2つ。まずは全選手が連動して、相手を自分たちが網を張るエリアへ誘導する。そしてボールが狙い通りのエリアに来たとき、選手が一気に集まって逃げ場をなくしてしまうことだ。
2つ目がなかなか難しい。特に攻撃的な選手は、チーム全体で奪いに行きながら1つ目の仕掛けで動きを止めてしまう傾向が強い。体力を温存して、次の攻撃に備えておこうと考える選手もいるだろう。あるいは、そもそも何のために相手を追わないといけないのか、深いところで理解し切れていない選手もいるだろう。
だがバルセロナ戦において、バイエルンの選手たちが足を止めるシーンは皆無だった。
リーグで34得点を決めているエースのレバンドフスキでさえ、絶えず守備で汗をかいた。それも嫌々ではなく、充実感を表情に浮かべながら。
この日MVPに選ばれる活躍をみせたミュラーは攻撃面だけではなく、前線の選手に指示を飛ばしながら精力的に相手を追い込み、コントロールしていた。