太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
無観客配信と、新たなる人材募集。
試練の夏、フェンシング界は前を向く。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph bySports Graphic Number
posted2020/07/26 11:30
「キャリトレ」での日本フェンシング協会の募集欄。太田雄貴会長の熱く激しい運営に加わる人材を探している。
若い人に仕事で求めることとは?
雇用形態は、契約社員です。
これは個人的な考えなのですが、終身雇用というモデルは必ずしもスポーツ界、特に私たちのような公益社団法人には合わないのではないか、という気がしています。
2021年に東京五輪が開催される、ちょうどその時期に、私は会長2期目の任期が終わります。つまり、協会の体制が変わる可能性がある。
パートナーシップマーケティング職の募集というのは、そうした体制の変化にかかわらず――つまりは属人的ではない形で、組織のサステイナブルな運営をしていけるようにという狙いもあります。しかし人材としてジョインされる方にとって、頻繁に体制が変わる可能性があるということは、雇用形態によってはリスクにもなりえるかもしれません。
だからこそ長期間ではなく、契約社員という立場で、若い人にとにかく手を動かしながらトライ&エラーを積み重ね、成功体験も掴んでもらえれば、と思っているのです。
そうした日々は、若いからこそ、経験することができるものですから。
私たちとともに働くことで、数えきれないほどの学びを得ていただき、次のステップへと踏み出していってほしい、と思っています。
新たな人材の方にはマーケティングだけでなくPRにも参画いただくとお伝えしましたが、その業務は当然、本記事の冒頭で触れた、全日本選手権をはじめとした大会まわりにも関わってきます。
五輪も大きく変わらなければいけないのでは?
そして、TOKYO2020。
選手も含めて私たちは、東京五輪が2021年の夏に開催されることを前提に動いています。
だからこそ私としては、オリンピックそのものの“変革”も視野にいれるべきだと考えています。
それはつまり、五輪は現地で観戦することこそが至上の価値なのだ、というオーセンティックかつクラシカルな形を再考する、ということです。
観客の安全を確保する、ということが主催者側にとってどれほどハードルが高いのか、ということは、日々報道などを通じて私たちは実感しています。
その一方で、これまで映像を通じてオリンピックに触れ、感動してきた人々は数限りなくいらっしゃると思います。
ならば、先端のテクノロジーを駆使して、映像の配信をより高次元なものにしていく、そこにとことんこだわっていくようなオプションを、日本発で構築していく。そしてそののちも、世界標準のものとして広げていく。そんな考えを持つべきではないでしょうか。
もちろん、スポーツをめぐる営みの中で、オリンピックほど変革が難しいものもないでしょう。それは理解しています。
ここで立ち戻るのが、冒頭で述べた私の信条です。
自分の努力によってできることは、可能な限り実現していくべく努力する――。
日本フェンシング協会の会長として、国際フェンシング連盟の副会長として、私が責任をもってできること。それは、自分のホームグラウンドであるフェンシングの土壌を変革し続けること以外にはありません。
全日本選手権での「NEW STANDARD」も、若い人材の募集も、すべてはつながっているのです。
今できることを、可能な限り。私たちはたゆむことなく、前に進んでいきたいと思います。
(構成:宮田文久)