太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
無観客配信と、新たなる人材募集。
試練の夏、フェンシング界は前を向く。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph bySports Graphic Number
posted2020/07/26 11:30
「キャリトレ」での日本フェンシング協会の募集欄。太田雄貴会長の熱く激しい運営に加わる人材を探している。
インターネット配信ならではの観戦体験を!
もう一本の柱、オンラインだからこその価値――「新しい感動体験」の創出もまた、私たちにとっての新たなチャレンジです。
剣先の軌跡を鮮やかに可視化する「フェンシング・ビジュアライズド」は、これまでライゾマティクスさんによる開発のもと、昨年の全日本選手権や高円宮杯で実践導入にまでこぎつけています。
この「フェンシング・ビジュアライズド」だけでなく、私たち関係者自身にとっても未経験であるような、インターネット配信ならではの観戦体験を提供したいと考えています。
たとえば音楽ライブの配信においても、観客がいる場合は無理だったカメラ位置やアングルによって、新たな映像体験が生まれるといった可能性があります。
観客がいる状態を100とした減点方式ではなく、まったく新たに、配信だからこそ可能な、別の100点の価値をつくっていくことこそが、今大会の最重要課題です。
これまでの変革と、これからの「NEW STANDARD」。
大会を通じて見えてくる、「NEW STANDARD」。
見えない価値を“可視化”していくことができれば、そして、スポーツ界における新たなモデルケースとなれたら、と思っています。
もちろんこの方針転換は、私たちにとっても大きな決断です。
私が2017年に会長に就任して以降進めてきた変革の中で、全日本選手権の変化には、明確にひとつの方向性があったからです。
大会観戦者数は、会場のみならずオンライン観戦も取り入れながら、2017年の生観戦1500名から、2019年の生観戦3198名、インターネット視聴におけるユニークユーザー6万3975名まで、大幅に増加させてきました。
チケットの価格もそう。最高単価は2017年の1000円から2019年の3万円まで、プレミア化も含めた価値向上を図ってきました。
これを伸長させていくという路線とは、今回の「NEW STANDARD」は異なります。
何よりチケットの販売がないわけですから。
しかし、防戦一方の中でも、攻め手をしっかりと作り、やり抜きたいと思っています。
スポーツ界において既に確立されてきた集客というビジネスモデルを、どう捉え直していけるのか。
本来ならTOKYO2020が開催されていたはずの今年、私たちの新たな“攻め”の姿勢を、ぜひご覧いただきたく思います。