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プロクライマー・杉本怜、29歳。
「今のボクにできることを考えた」

posted2020/07/27 11:00

 
プロクライマー・杉本怜、29歳。「今のボクにできることを考えた」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

PROFILE

photograph by

Yuki Suenaga

 Being president doesn't change who you are ―― it reveals who you are.
(大統領になると、その人の本質が変わるわけではない――本質が明らかになるだけだ)

 新型コロナウイルスによって活動が停滞した期間、プロクライマーでスポーツクライミング日本代表の杉本怜(マイナビ)の活動は異彩を放っていた。

 ZOOMを利用した有料のチャリティートークショーを開催し、その売り上げは杉本の大学時代から競技生活を支えてくれた2つのクライミングジムに寄付。さらに、クライミングジム救済のためのクラウドファンディングでも支援者になった。

 こうした行動を取れた理由を、「プロクライマーとしての自分に何ができるかを考えたから」と明かす。

「国内外で大会の開催が見送られて、プロクライマーとしての活動の場がなくなってしまった。もどかしい気持ちのなかで、自分がクライミング界を盛り上げられることは何かと考えたんです。僕は喋ることは好きなので、自分の経験をテーマにしたトークショーならできるなと」

 4月中旬から5度行ったチャリティートークショーは、延べ160人ほどが参加し、総額30万円弱が集まった。

「1回目は緊張しましたけど、その後は楽しめましたね。今後も不定期ながらもやっていきたいと思っています。ただ、あくまでも喋ったり、教えたりというのは、プロクライマーとしての本来の活動の副産物なので」

杉本が考えるプロクライマーの第一義。

 野球やサッカーなどはプロリーグがあり、個人競技のテニスやゴルフなどにはプロトーナメントがある。そこで活動する選手たちが『プロフェッショナル』を肩書にする。

 しかし、クライミングにはプロリーグやプロトーナメントはない。活動の主戦場がスポーツクライミング競技であれ、自然の岩場であれ、『プロクライマー』と名乗る定義は本人次第。では、杉本の考えるプロクライマーとは、どういうものなのか。

「自分の登りを見せることが、プロクライマーの第一義だと考えています。僕のように競技がメインの選手なら、大会での好成績や、いいパフォーマンスを見せる。自然の岩場での活動がメインなら高難度課題を登ったり、チャレンジングなクライミングをしたりする。それで人々に『カッコイイ!』と思わせる。それがプロクライマーだと思っています」

 早稲田大理工学部を卒業した2014年からプロクライマーとして活動している杉本は、現在はマイナビなど5社からスポンサードを受ける。

「大学生の頃は漠然と卒業後はプロクライマーになりたいと思っていました。ただ同時に、卒業したら就職して働きながらボルダリングをやる程度になってしまうのだろうなとも感じていて」

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