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2019-20ブンデス日本人総括。
鎌田大地、長谷部誠、大迫勇也編。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/07/18 11:50

2019-20ブンデス日本人総括。鎌田大地、長谷部誠、大迫勇也編。<Number Web> photograph by Getty Images

長谷部誠と鎌田大地が所属するフランクフルトは昨季ほどの躍進とはならなかったが、長谷部が出た際にはやはりチームは引き締まった。

鎌田自身が自覚していた役割。

 鎌田はヒュッター監督の要求するプレーの意図をしっかりと理解して、流れを好転させるためのプレーを高いレベルで実践した。将来性を感じさせる資質を試合ごとに披露していたからこそ、主軸の1人として起用され続けたのではないだろうか。

 ELリエージュ戦後、今季の役割について鎌田自身は次のように分析していた。

「今季は基本的に中継役というか、カウンター時の起点になることが多いですね。動き回ってチームのパイプ役になる感じです。僕がゴール前に出ていく回数も少なからずありますけど、どっちかというとサイド攻撃が主体なので。

 昨季と違って、アレ(現ウェストハム)のようにボールを収められる選手も、アンテ(・レビッチ/現ミラン)のようにスピードのある選手もいない。彼らがいなくなったぶんボールをうまく運ばないとだめなので。そこを埋めていることが評価されていると思う」

 その言葉通り、チーム内での自身の役割をしっかり果たすことで監督の信頼を勝ち取り、試合に出続けることでブンデスリーガの激しさとスピードに慣れ、仲間の信頼も少しずつ集まるようになっていった。

 そうした時期を大切にしてきたからこそ、終盤にはトップ下で起用された時に、自分の得意なプレーを出しやすい地位を築けていた。ゴールやアシストを記録しただけではなく、決定機を作り出す攻撃の軸にまで成長している。

 フランクフルトは契約延長に向けて鎌田と交渉を重ねているが、他クラブからの注目も集まってきている。今オフの去就が気になるところだ。

長谷部1人だけの問題ではないが。

 3バックの中央で大活躍した昨季と比較すると、今季の長谷部誠は不動の存在としてのパフォーマンスではなかったかもしれない。

 前半戦の終盤はチームの不調もあったとはいえ、相手の攻撃に振り回される場面が多く、チームは失点を重ねる試合が続いてしまった。もちろん長谷部1人でどうこうできることではないし、仕方がないという見方もできる。しかし、長谷部自身は決して納得しないだろう。

 昨季最終節のバイエルン戦後、長谷部はこう振り返っていた。

「個人的には手応えもありますが、周りが動けていなくて自分のやることが多くなると、僕のパフォーマンスも少し落ちてくるというか、うまくいかないことが多くなる。チームが走れて、動けて、頑張れているときは、自分も狙いを定めてプレーできるんですけどね。1人の選手として、難しい状況でもチームを助けられる選手は本当にいい選手だと思うから。そういう意味ではまだまだ。もっと良くしなきゃいけないと感じました」

 チームが苦しい時こそ、流れを打破するプレーがしたい。チームが最後のところで踏ん張り、勝利を手にできるように自分の経験を活かしたい。それが目指すプレーヤーとしてのあるべき姿なのだろう。

【次ページ】 窮地を救った経験とインテリジェンス。

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