欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
2019-20ブンデス日本人総括。
鎌田大地、長谷部誠、大迫勇也編。
posted2020/07/18 11:50
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
鎌田大地は、今季のフランクフルトにおける最大の発見だろう。
開幕前、地元メディアからレギュラー候補どころか、それこそ放出候補とみられていた男が、シーズンの終盤には「カマダがいないと攻撃がうまくいかない」と言われるほどの存在にまでなった。
ターニングポイントとして語られる瞬間はいくつかある。ヨーロッパリーグで見せたアーセナル戦での2ゴール、ザルツブルク戦のハットトリックはもちろん、ブンデスリーガでは相手オウンゴールを導いたドルトムント戦での同点弾演出、フライブルク戦での初ゴール、そして、各方面からべた褒めされたヘルタ戦での圧巻の3人抜きドリブルからのアシスト。どれも素晴らしいシーンだ。
シーズン通じてコンスタントに起用。
そうした結果ももちろん重要だが、今季の鎌田を語るうえで何より重要なのはシーズンを通してコンスタントに試合に起用された点ではないだろうか。ブンデスリーガ28試合、ヨーロッパリーグは予選も含めて15試合、ドイツカップ4試合。合わせて公式戦47試合3291分間も出場している。
アドルフ・ヒュッター監督は開幕から鎌田を起用し続けたが、すべての試合で高い評価を受けていたわけではない。
むしろ地元紙から辛口の点数をつけられる試合も多かった。「1」が最高の専門誌『キッカー』の採点を見てみると、平均3.83はそこまで高評価というわけでもない。チームで見ると15番目ぐらいの数値だ。
またブンデスリーガに限れば、初得点は第28節まで待たなければならなかった。
「攻撃的選手は結果が出なければすぐに代えられる」と言われる欧州サッカーの世界で、それでも鎌田がスタメンに名前を連ねていたのはなぜだろうか。
監督というものは、チームがどのように戦うべきか、どうすればチームとして成熟していけるか、勝利への可能性を高められるのかというプランを常に頭に描いている。偶発的な要素の多いサッカーでは、個々の選手が自分の得意なプレーを見せているだけではうまくいかないからだ。