ぶら野球BACK NUMBER
神戸で思い出した野球観戦の快楽。
野球場は狂おしい程に自由なのだ。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2020/07/18 10:00
0人と5000人の差は、5000人と5万人の差よりもずっと大きい。そんなことにも気づかされる。
屋外のカレーは野球場の味。
トレード移籍が決まったばかりのウィーラータオルも並ぶグッズ売り場には長蛇の列。ただし、ここでもスタッフがしっかり間隔を調整して列や店内が密にならないよう工夫していた。
ファンも多少の待ち時間や不便さくらい問題なく受け入れる。球場飯やドリンク類もいつもより種類が極端に少ない。それでもかまわない。だって、目の前で野球が見られるのだから。
栄光の背番号51、ブルーウェーブ時代のイチロー壁画もある往年のグリーンスタジアム神戸感を堪能しつつ、名物・沖縄黒カレー(700円)をかき込む。あぁこの屋外で食べるカレーの味、野球場って感じがする。
なんてすべてに感動していたら本格的に雨が降り始めた。雨具を身にまとい一度は席に戻り着席して、あぁ屋外球場で顔に雨が打ちつけるこの感覚も久しぶりだな……とかやってる場合じゃない。
リュックを入れるポリ袋を忘れたことに気付いた。ポンチョや合羽で自分の身を守るだけじゃなく荷物が濡れないよう(平常時は後ろの席からこぼれ流れ落ちるビールから守るため)、大きなビニール袋にいれるのは屋外野球観戦の常識だが、こちらも久しぶりの遠征で勘が鈍っているようだ。
無常にも雨は18時の試合開始直前に強まり、約15分後に中止が決定。規制退場も混乱なく行われた。また明日。いいよ、1日ぐらい全然待つ。だって野球ファンは3カ月以上待ったんだから。
伊賀大介氏も神戸へ参戦。
「いやー綺麗な球場だなー。空気がいい! 雨のサンチェス、神経質そうだけど大丈夫すかね?」
翌11日午後4時前、総合運動公園駅には盟友・伊賀大介氏の姿があった。伊賀さんは今季から「文春野球」という野球コラム企画で巨人監督を務めている。しかも「まずは場数を踏むことが大事なんで結果はどうあれ自分で書きます」というコラム界のストロングスタイルだ。
売れっ子スタイリストが見せる、そのジャイアンツ球場から這い上がるようなハングリーさは尊敬に値する。