Number ExBACK NUMBER
黒人からアメリカ先住民、女性へ。
米スポーツ界で広がる公平への願い。
posted2020/07/12 19:00

NASCARのスタッフも、国歌斉唱中に人種差別反対の立膝の姿勢をとった。この流れはもう止まらない。
text by

ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
アメリカのスポーツ・イベントでよく流れる「Welcome to the Jungle」や「Sweet Child o' Mine」といったロックの名曲を世に出したガンズ・アンド・ローゼズというバンドがある。
そのリード・ヴォーカリストが昔、ステージの上で赤地に星がちりばめられた青い「X」の”革ジャン”を着ていた(今は知らない)。背中には「REBEL(反逆)」の文字が貼られており、「まさにロックンロールの精神だ!」と思ったが、それを当時、ロック好きのイギリス人に言うと、こう呆れられたことがある。
「今どき、南軍旗のジャケットなんて着てる奴は、人種差別主義者だよ」
ADVERTISEMENT
南軍旗=Confederate Flag。何度も聞き直したほど、聞き慣れない言葉だった。当時は「ふーん、そうなんや」ぐらいにしか思わなかった。
南軍旗の使用を禁止したカーレース団体。
それ――南軍旗や南北戦争の意味――を今さらながら理解しようと努めた理由は、6月11日、北米最大のレース団体と言われているNASCARで、その南軍旗が「すべてのイベントで使用禁止」となったからだ。その後行われたアラバマ州のレース会場で、黒人唯一のフルタイム・ドライバーであるババ・ウォラスのチームが使用するガレージから、奴隷制度を連想させる「絞首刑の縄」が見つかったことが決定的だった。
後のFBIの調査で、それは「前年から放置されていたもので、ウォラスを個人的に攻撃する目的ではなかった」と結論付けられたものの、当日のレース会場の外では南軍旗を掲げた車が行き交い、道路脇ではそれまでのように南軍旗やそれを模したTシャツなどのグッズが販売され、空には「NASCARへの資金は供給停止せよ」という横断幕をつけた飛行機が飛んでいたという(すべてSNSで確認できる)。
後にトランプ大統領自身が、NASCARの南軍旗禁止に反対姿勢を示し、ウォラスを責めるようなツイッターをしたぐらい、ある種の人々にとって「南軍旗」は重要なものなのだと知った。