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黒人からアメリカ先住民、女性へ。
米スポーツ界で広がる公平への願い。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byAFLO

posted2020/07/12 19:00

黒人からアメリカ先住民、女性へ。米スポーツ界で広がる公平への願い。<Number Web> photograph by AFLO

NASCARのスタッフも、国歌斉唱中に人種差別反対の立膝の姿勢をとった。この流れはもう止まらない。

南北戦争と南軍旗の意味を調べた。

 南軍旗については、たとえば日本語版のWikipediaによると、こう記されている。

「南北戦争終結以後、これらの旗が公に使われることはないが、南部の住民の中には自分達の歴史のシンボルとしてこれらの旗、特に有名な南軍旗やレベル・フラッグを使い続ける者もいる」

 順序は逆になるが、そこから南北戦争=Civil Warを調べてみる。

「奴隷制存続を主張する11州のアメリカ合衆国南部諸州が合衆国を脱退、アメリカ連合国を結成し、合衆国にとどまった北部23州との間で戦争となった」(南北戦争)

 アメリカの歴史を学習する過程で、南軍が英語では「Confederate States of America」で「アメリカ連合国」と邦訳されていることを知った。連合国の11州が、具体的にバージニア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、ミシシッピー州、テネシー州、アーカンソー州、フロリダ州、アラバマ州、ジョージア州、ルイジアナ州、テキサス州だという認識を得た(それらを日本の学校で習ったかどうかは記憶にない)。

「普通」に潜む差別性と歴史を考える。

 私のような外国人がアメリカで生活する上で、アメリカの歴史を知る必要が絶対にあるわけではないが、ミネアポリスの黒人男性が警察官の暴力により殺害された事件をきっかけに始まった全米規模の抗議運動と、NASCARにおける南軍旗の使用禁止の因果関係を本当に知りたければ、アメリカの歴史を学習し、再認識する必要が出てくる。そして知ってみると、自分の中にそれまであった「普通」に疑問を投げかけることになる。

 たとえば、「シカゴの南部は黒人が多い地区だから、危ない」という言葉。

 映画やドラマでそう語られているし、実際に銃犯罪の事件も多い地区ではあるのだろう。しかし、それが「なぜなのか?」までは考えたことがない。シカゴという町が形成される中で、白人社会が決めた構造的な人種差別に基づいているという認識が生まれたのは、アメリカの歴史を学習し、再認識したからだ。

【次ページ】 大学スポーツ界が「普通」を覆した。

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