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黒人からアメリカ先住民、女性へ。
米スポーツ界で広がる公平への願い。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byAFLO

posted2020/07/12 19:00

黒人からアメリカ先住民、女性へ。米スポーツ界で広がる公平への願い。<Number Web> photograph by AFLO

NASCARのスタッフも、国歌斉唱中に人種差別反対の立膝の姿勢をとった。この流れはもう止まらない。

「開拓精神」というアメリカの歴史。

 黒人とアメリカ先住民に対する人種差別を同一線上で語っていいのか迷っていたが、これについてもアメリカの歴史を学習し、再認識する作業を経ると、やはり自分が今まで持っていた「普通」に疑問を投げかけることになる。

「普段、アメリカ先住民に会うことがないのは、なぜだろう?」と。

 地名の多くやスポーツチームの名前がアメリカ先住民から来ているのは何となく分かっていても、そこに先住民の「姿」や「声」はなく、それが「なぜなのか?」までは考えたことがなかった。

 彼らの居住区が定められていることは知っていても、それが「開拓精神」という名の下に彼らの豊かな土地を奪って建国されたアメリカの歴史に根ざしたことだという認識もなかった。

スポーツは娯楽、ではもう済まない。

 アメリカには「黒人とアメリカ先住民の人種差別は別次元の話」という人もいるようだが、たとえば黒人の映画監督であるスパイク・リーは、イギリスのテレビ局BBCでこう話している。

「(黒人への人種差別と暴力は)1619年に私の祖先が母なるアフリカからバージニア(州)へ(奴隷として)連れてこられて以来、絶えることなく、ずっと続いてきたことです。そもそも、アメリカ合衆国の基盤は、この国に元からいた人々(先住民)の土地を奪い、虐殺し、奴隷にすることで作られたのですからね」

 日本でもそうかも知れないが、アメリカにはスポーツはエンターテイメント=娯楽であり、人種差別の話などしたくないという人もいるし、差別する側でも差別される側でもないのなら、立ち入るべきではないという人もいる。

 その一方でプロスポーツにまったく無関心な人たちの中には、南軍旗にしろアメリカ先住民を想起するチーム名にしろ、「いまだにそんなことやってるのか?」と驚く人々がいる。

【次ページ】 アメリカのスポーツを飲み込む奔流。

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