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黒人からアメリカ先住民、女性へ。
米スポーツ界で広がる公平への願い。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byAFLO

posted2020/07/12 19:00

黒人からアメリカ先住民、女性へ。米スポーツ界で広がる公平への願い。<Number Web> photograph by AFLO

NASCARのスタッフも、国歌斉唱中に人種差別反対の立膝の姿勢をとった。この流れはもう止まらない。

大学スポーツ界が「普通」を覆した。

 そうこうしている内にミシシッピー州立大学のフットボール選手が、ミシシッピー州が全50州の中で唯一、南軍旗を旗の一部に使用していることに「この旗を変えるないなら、この州を代表することはない」と発言し、結果的に同州の議会が旗の変更を決定するニュースが流れた。

 さらにオハイオ州のシンシナティ大学が、同大学に多大な寄付をしたものの、数々の人種差別(黒人だけではなく、日系人なども含まれる)発言で知られるMLBレッズの元オーナー、マージ・ショット(故人)の名が付いていた野球場の名前を変更する決定を下した。

 ミシシッピー州やシンシナティ大学で、それまで「普通」とされていたことが覆ったのだ。

インディアンスにレッドスキンズ。

 興味深かったのは、そういったアメリカの歴史に根差した構造的な人種差別を改善するための「具体的な行動」が、黒人からアメリカ先住民にも波及したことだ。

 シンシナティ大学が所属するNCAA(全米大学体育協会)は、教育機関であるがゆえに人種差別に敏感で、黒人よりもさらに人口比率が少ないために蔑ろにされてきたアメリカ先住民への偏見を解消すべく、2000年代に入って一部の大学を除いて「インディアンス」などのアメリカ先住民の名称を、大学のチーム名(著者注:アメリカではシンシナティ大学ベアキャッツなどとチーム名が付いている)として使用するのを禁じた。

 プロ・スポーツのチームは今まで、典型的には「勇敢なアメリカ先住民をリスペクトして」というような言い訳でチーム名を変更してこなかったが、NFLのワシントン・レッドスキンズやMLBのクリーブランド・インディアンスは早々とチーム名の変更を考慮し始めた。

 今後は昨季のスーパーボウル王者カンザスシティ・チーフスやMLBアトランタ・ブレーブス、NBAゴールデンゲート・ウォリアーズやNHLシカゴ・ブラックホークスなどにも、この問題が波及するかも知れない。もちろん、何らかの説明=言い訳がなされて、継続使用される可能性もある。

【次ページ】 「開拓精神」というアメリカの歴史。

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