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鹿島の新スタイルいまだ完成せず。
ポゼッションの精度と攻撃面の課題。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/06 11:40
鹿島アントラーズが苦しんでいる。しかし前へ進むと決めた以上、いまは耐えるしかないのだ。
選手たちが受けた精神的ダメージ。
この1点目を決めた谷口彰悟のポジションについて、オフサイドだったのではないかと試合後も議論が続いている。
「中断期の練習試合でもセットプレーでの失点がなかったし、(ゴールの判定には)正直、ガクンという感じはあった。監督が代わり、新しいことにチャレンジしようというスタートだったのでそこで躓いたのはある」と内田は話す。
ザーゴ監督も「明らかなオフサイドだったがとってもらえず、過度な緊張を選手たちに与える結果となった」と、立ち上がりの失点がゲームの流れに影響したという見解を示した。
23分の飲水タイム時にも「オフサイドでしょう?」と選手たちが口にしていたというから、精神的な打撃の大きさが想像できる。
その飲水タイム前後は鹿島が川崎を押し込むシーンが増えていたが、30分に喫した2失点目が決定的だった。
川崎の新スタイルが感じさせた可能性。
ポゼッションサッカーの経験において、川崎は鹿島の前を歩いている。先制点に繋がるコーナーキックも、文字通り流れるようにパスを繋ぎ、ボールを逆サイドへ運びチャンスを作って生み出したものだ。
それを可能にしているのは、パスセンスに加えて受け手のポジショニング能力。スペースへ顔を出す選手たちの動きこそが、連動性の鍵なのだと改めて実感するシーンだった。
なんのためにポゼッションするかという意図をチームで共有できているから、次々と展開が変わる試合の中でも、試合の主導権を手放さないのだろう。
今季は「超アグレッシブに」という鬼木監督のもと、川崎は4-3-3へシステムを変更した。右ウィングの家長から見事な逆サイドへの長いパスを受けて左ウィングの長谷川が決めた2点目は、川崎の新たなスタイルの可能性の大きさを示した。