フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
米フィギュア連盟のLGBTへの姿勢。
「聞かない、言わない」から変化が。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byElsa/Getty Images
posted2020/07/06 11:00
2000年代に全米選手権を3連覇したジョニー・ウィアー。連盟関係者たちに「もっと男らしい衣装を着るように」などと言われていたという。
ロシアは2013年にアンチ同性愛の法律を制定。
ロシアは2013年にアンチ同性愛の法律を制定した。「未成年者の前で同性愛を宣伝する行為を禁じる法律」という名目だが、現実には同性愛の人々が次々と投獄され、拷問を受けるなど、世界中の人権擁護団体から批判を浴びていた。
そんな中で開催されたソチオリンピックに、オバマ大統領は同性愛の元アスリートたちを代表団として派遣するという形で、抗議のメッセージを送りつけた。
レズビアンであることを公表しているテニスの元女王、ビリー・ジーン・キングらと共にボイタノが選ばれたときに、自分がゲイであることを公にするのは大事なことだと感じたのだという。
「村主章枝の告白が支えになった」
またこれまでは、主に男性のゲイにばかり焦点が当てられてきたが、今回のUSFSAのコラムの中では、女子シングルのアンバー・グレン、そしてアイスダンスのカリーナ・マンタなど、バイセクシャルであることを公にした女子スケーターのインタビューも含まれている。
2018年にカミングアウトしたマンタは若い頃、レズビアンやバイセクシャルの女子スケーターの前例はないのかと、必死で検索をしていたこともあったという。
「前例がないことで、自分は存在してはいけないのかと感じていた」という彼女にとって、村主章枝が自分はバイセクシャルかもと告白したことは心の支えになったのだという。
アスリートなら本業に専念して、わざわざプライバシーまで公表しなくてもいいではないか、という意見も当然あるだろう。
実際、カミングアウトする必要性を感じないまま、選手活動を続けているゲイのスケーターも少なからずいることは、筆者も知っているし、個人の選択を尊重する。
だが世界には、「自分は異常なのか」「存在してはいけない人間なのか」と悩むレズビアン、ゲイ、バイセクシャルの若者、子供たちが大勢いる。時にはそのことを理由にいじめに遭い、周りから疎外されて追い詰められていくケースもある。
子供たちが憧れるスポーツの団体が、そういう人々にも安全な居場所を与えて、自分らしく生きながら差別されることのない社会を、と呼びかけることは将来に向けて大きな意義があることに違いない。