フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
米フィギュア連盟のLGBTへの姿勢。
「聞かない、言わない」から変化が。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byElsa/Getty Images
posted2020/07/06 11:00
2000年代に全米選手権を3連覇したジョニー・ウィアー。連盟関係者たちに「もっと男らしい衣装を着るように」などと言われていたという。
ゲイに対するスタンスを変えたUSFSA。
2017年に同性のパートナーと入籍したティモシー・ゲイブルは、2006年に終えた現役活動中ついにカミングアウトしなかった。「当時は、そういう時代だった。競技に出ていた頃にカミングアウトしていたら、自分が成し遂げた業績を達成することは到底無理だったと思う」と語っている。
アメリカにおいてフィギュアスケートは、「健全な」ファミリーエンターテイメントでなくてはならなかった。ファンのほとんどが女性と子供たちであり、スポンサーはアスリートに「社会の理想的モデル」であることを要求する。
性的指向に関しては「聞かない、言わない」というのがこれまでのUSFSAの基本姿勢だった。
だが社会の変化と共に、そんなUSFSAのスタンスも時代遅れになった。
USFSAの広報担当、バーバラ・レイシャ―トは以下のようなコメントを送ってきた。
「私たちは、LGBTQ+のメンバーとファンにとって安全な場所を提供できるように、努力をし続けています。お互いの意見と貢献、心身の健康を尊重し、スケートコミュニティの中で双方が成長できる良い関係を築いていきます」
ソチオリンピックが転機になったボイタノ。
現在は料理番組などでも活躍するブライアン・ボイタノは、引退後も長い間自分のセクシュアリティを公にしてこなかった1人だった。
長身で力強い滑りをするボイタノは、男子スケーターの中でも美しさよりも、強さを売り物とする選手だった。その反面、彼がゲイであることは関係者の間ではよく知られていた。
「でも自分の身内以外に、告白しようとは全く思っていませんでした」
そう語ったボイタノが公にカミングアウトしたのは、比較的最近、2014年ソチオリンピックの米国代表団に選ばれたときのことである。