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EURO2020延期で誰が得した?
1年という時間がもたらす影響。
text by
デーブ・アパドゥーDave Appadoo
photograph byFranck Faugere/L'Equipe
posted2020/06/28 19:00
EURO延期のため36歳で臨むことになったクリスティアーノ・ロナウド。この1年が彼にどんな影響をもたらすのか。
得事例1:オランダ代表
昨シーズンはオランダ代表とアヤックス・アムステルダムのどちらも、素晴らしいプレーを実現した点を書かねばならない。それは忘れかけていたヨハン・クライフの現役時代を彷彿させるものでもあった。オランダに関しては、クライフ時代の伝説とノスタルジーに対する絶対的な信頼感が存在する。
直近のふたつのメジャー大会(EURO2016とWC2018)には欠場したものの、オランダは昨年鮮やかに復活し、EURO2020の注目株に一躍浮上した。だが、ここ数か月というもの、怪我によるメンフィス・デパイの長期離脱と今季のアヤックスの停滞、フレンキー・デヨング(バルセロナ)とマタイス・デリフト(ユベントス)がクラブで出場機会に恵まれないことなどが重なり、精緻なサッカーマシンは故障をきたしているように見うけられる。
明らかにオランダは、多くの問題に直面している。1年の猶予が生まれたことで、ロナルド・クーマン監督が安堵しているのは間違いない。来年の本大会に向けて、もう一度魅力的なチームを立て直す時間ができたのだから。
得事例2:アーリング・ハーランド
アーリング・ブラウト・ハーランドが2得点を決めて、キリアン・ムバッペのパリ・サンジェルマンをCLラウンド16第一戦で粉砕(2対1でBVBの勝利)したのは、今からほんの数週間前のことだった。だが、このドルトムントの新星は、コロナ禍でシーズンが中断する前から、その輝きに陰りが見られ、どんな強固な壁も粉砕する本来の力強さを失った印象を与えた。その後のフライブルク戦とボルシア・メンヒェングラートバッハ戦では精彩を欠き、3月11日に無観客でおこなわれたPSGとのCLラウンド16第二戦は、まるで幽霊のように存在感が薄かった(結果は2対0でPSGの勝利)。
もちろん誰も《EBH》が「ただの平凡な選手に成り下がってしまった」とは言わない。ただ、リーズに生まれたこの若者には、急激にスターダムにのし上がったことによる環境の変化に適応するための時間――しばしの安息の時間が必要なのかも知れない。ひと呼吸おくことで、彼のプレーもまた豊かになるだろう。
ノルウェーはEURO2020のチケットをまだ獲得していない(プレーオフでセルビアと対戦。勝てばスコットランド対イスラエルの勝者と対戦)。だが、1年という時間が得られたことで、レアル・マドリーからレアル・ソシエダにレンタル移籍しているもうひとりの早熟の天才マルティン・ウーデゴールもまた、より危険な存在になるのは間違いない。ふたりがこのまま順調に成長し続けたとき、ノルウェー代表はEURO2021で注目すべき存在になる。