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4割打者、120試合なら可能性あり?
4つの条件に合う候補、大穴は……。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKyodo News(L)/Nanae Suzuki(R)

posted2020/06/18 11:50

4割打者、120試合なら可能性あり?4つの条件に合う候補、大穴は……。<Number Web> photograph by Kyodo News(L)/Nanae Suzuki(R)

規定打席未満ながら4割をマークしたことがある近藤健介(左)と、左の最強打者・柳田悠岐。120試合制で夢の成績達成なるか。

すべての条件に当てはまる候補は?

 1の試合数はすべての選手が同条件だから除外するとして、2~4の条件に当てはまる「4割候補」はだれか。

・近藤健介(日本ハム)

 2017年に167打数69安打、打率.413をマーク。NPB史上100打席以上で打率4割をマークした選手は、この年の近藤だけである。すごいのは、69安打に加えて60四球を選んでおり、抜群の選球眼だ。安打と同じくらい四球を選ぶことができれば、4割の可能性はぐっと近づく。また、盗塁は少ないが足は決して遅くない。

・柳田悠岐(ソフトバンク)

 2015年にトリプルスリーを記録。足にも定評がある。2015年に打率.363、2018年に打率.352とハイアベレージで首位打者になっている。広角に安打を打ち分けることができるスプレーヒッターで、左投手も苦にしない。リーグ屈指のスラッガーだから、投手も警戒して四球も多い。

・吉田正尚(オリックス)

 伸び盛りのスラッガー。小柄だが思い切ったスイングでハイアベレージを残しており、四球も昨年は79と投手の警戒も高まっている。特筆すべきは「スロースターターで夏場に強い」こと。昨年3、4月は打率.280だったが、7月は打率.357、8月は打率.407。いきなり夏に開幕する今季は、最初から走る可能性がある。

・西川遥輝(日本ハム)

 駿足のリードオフマン。打率3割は一度だけだが、ここ2年は96、93と多くの四球を選んでいる。西川はMLBを志向していると言われるが、「打率4割」を手土産に海を渡りたい――と考えるかもしれない。

・丸佳浩(巨人)

 セ・リーグでは鈴木誠也(広島)、ビシエド(中日)、山田哲人(ヤクルト)、坂本勇人(巨人)となぜか強打者は右が多い。左では丸がいる。選球眼はリーグ屈指、足も速く有望だ。ただ打率は.310が最高。固め打ちがあまりないのが気にはなる。

・西川龍馬(広島)

 大穴的存在だが、昨年初めて規定打席に乗った西川を上げておきたい。内野手だったが丸の巨人移籍で外野にコンバートされて伸びた。四球こそ多くないものの、これから大化けする可能性はあるだろう。

なぜ4割打者は絶滅したのか?

 最後にもう1つ「4割打者出現」には、重要なファクターが関連している。

 スティーブン・ジェイ・グールド(1941-2002)といえば日本に「アノマロカリス」などカンブリア紀の生物を紹介した進化学者として知られる。

 熱烈な野球ファンだったグールドは「フルハウス 生命の全容」という著書で、生命進化の謎を説明するために「なぜ4割打者は絶滅したか」という自説を展開している。

 打撃技術が進化し、様々なデータを活用することができる現代の打者が、なぜ4割を打つことができないのか?

【次ページ】 実力のばらつきが小さくなった。

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