酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
4割打者、120試合なら可能性あり?
4つの条件に合う候補、大穴は……。
posted2020/06/18 11:50
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News(L)/Nanae Suzuki(R)
6月19日に今年のプロ野球が開幕する。これまで最も遅いシーズン開幕は日本プロ野球が始まった1936年の4月29日だった。それよりも約50日も遅い、まさに異例のシーズン開幕だ。
オールスター戦や交流戦もなくなる。パ・リーグは上位2チームのクライマックスシリーズを行うが、セ・リーグは廃止。それだけペナントレースの試合数を確保しようとしているが、それでも120試合だ。昨年より23試合も少ない。
NPBの公式戦が120試合以下だったのは、セ・リーグは1952年、パ・リーグは1953年以来だ。しかも、少なくとも7月初旬までは無観客試合だ。例年とは全く勝手が違う中で行われることになる。
しかし、試合数が少ないからこそ期待できることもある。特に「率」に関わる記録は、一般的に試合数が少ない方が好記録が出やすい。プロ野球の「夢の記録」といえる「打率4割」は、その代表だろう。
MLBでは1901年のア・ナ両リーグ体制以降、8人が13回記録しているが、NPBでは誰も記録していない。
では、改めて「打率4割」の条件を検証してみよう。
バース、イチロー、張本の試合数。
<1.試合数は少ない方がいい>
半年にわたる長いペナントレース、スランプなくずっと好調を維持するのは不可能だ。多少の浮き沈みはあるにしても、何とか4割をキープして逃げ切るためにも、試合数が少ない方がいい。
NPBの打率5傑の試合数を見ると、それがわかる。
1 R.バース.389
(1986年阪神/126試合)
2 イチロー.387
(2000年オリックス/105試合)
3 イチロー.385
(1994年オリックス/130試合)
4 張本勲.3834
(1970年東映/125試合)
5 大下弘.3831
(1951年東急/89試合)
打率.380以上はこの5例だが、試合数は最大で130試合。120試合以下も2例ある。やはり試合数は少ない方が打率は高くなると言える。
上位5傑で、フル出場したのは1994年のイチローだけ。多くの選手は故障などで欠場したこともプラスに働いて高打率をキープした。
試合についてもう少し言うと「集中的に試合がある方が、高打率が期待できる」と言える。昭和中期は、試合間隔が今より空いていて、週に3、4試合という週もあった。試合が飛び飛びだと好調をキープするのは難しい。
今季の閉幕が当初の想定通り11月になるとしても、シーズン通してかつてない過密なスケジュールになると予想される。選手は大変だが、高打率をキープするには好都合だと言える。