酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
4割打者、120試合なら可能性あり?
4つの条件に合う候補、大穴は……。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News(L)/Nanae Suzuki(R)
posted2020/06/18 11:50
規定打席未満ながら4割をマークしたことがある近藤健介(左)と、左の最強打者・柳田悠岐。120試合制で夢の成績達成なるか。
大事なキーファクターは「四球」。
<2.打数は少ないほうがいい>
「試合数が少なくなれば、打数も少なくなるじゃないか」というかもしれないが、そうではない。同じ試合数でも、四球が多い打者は打数が減って、1本当たりの安打の価値が上がる。
つまり「選球眼が良い打者」の方が、打率は上がりやすいのだ。
MLBの最後の4割打者は、1941年のテッド・ウィリアムスだ。この年のウィリアムスは、185安打を打ったが、これに加えて145もの四球を選んだ。これによって打数は456まで減少。打率を.406まで押し上げた。
打率4割を期待できるのは「安打製造機」だと思われがちだが、多くの安打を打つタイプの選手は四球をあまり選ばないので、打数が増える傾向にある。それよりも安打も四球も多い「アベレージヒッター」の方が期待できる。今季の規定打席は372だが、四球を80選べば、打数は292になり、117安打以上打てば4割に到達できる。従来よりハードルはかなり低くなる。
足の速い左打者がやっぱり有利。
<3.左打者の方がいい>
MLBの4割打者13例のうち、左打者は8例、右打者は5例。(右の5例のうち3例は、三冠王2度、史上最高の右打者と言われたロジャース・ホーンズビー)。
NPBの打率上位10傑のうち、右打者は7位の内川聖一(2008年、打率.378)だけだ。左打者は打席から一塁への距離が数十センチ短い。わずかの差だがこの差は大きい。
また野球では、右投げの投手が左投げの投手よりも2~3倍多い。右投手に有利だとされる左打者の方が、打率は高くなる傾向にある。
<4.足は速い方がいい>
きわどい当たりを安打にするためにも、足は速い方がいい。シーズン終盤、打率をめぐってぎりぎりの攻防になれば、数本の内野安打が利いてくる。
日本の打率上位で見ても、1位のバースは例外だが、2位から5位の打者はみんな駿足だった。日曜に「喝!」を連発している張本勲は、駿足の印象はないが、通算319盗塁している。大下弘も1947年には27盗塁している。