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顕彰馬キタサンブラックの深イイ話。
北島三郎に清水師、武豊は天に……。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/06/12 20:00
'17年、ラストランの有馬記念を制覇。単勝1.9倍の1番人気に応えた。
菊花賞の優勝が証明したこと。
菊花賞を制したキタサンブラックだが、当時、盛んに心配されたのが距離延長への対応だった。父のブラックタイドはディープインパクトの全兄という事で問題なかったが、母の父が短距離馬のサクラバクシンオーだったため、長い距離のレースに出走するたびに不安視されたのだ。
しかし、現場の手応えは違った。管理する清水調教師は常に一貫して次のように口にしていた。
「調教の走りや乗り手の意見を聞く限り、距離延長はこなせると信じています。長い距離がダメなようには思えません」
そんな信念に誤りがなかったと証明したのが菊花賞での優勝劇だった。
競馬界を引っ張るトップホースへ。
さて、ここまでは北村宏司騎手が主戦だったキタサンブラックだが、同騎手がこの当時、怪我によって戦線を離脱する不運があった。そのため、続く有馬記念(GI、3着)では横山典弘騎手が代打騎乗、そして、翌年から新たに武豊騎手を主戦に迎えると、本格化の時期もあいまって当時の競馬界を引っ張るトップホースへと変身を遂げた。
'16年に天皇賞(春)(GI)で2つ目のGI勝ちを飾ると、秋にはジャパンC(GI)を制覇。有馬記念(GI)こそクビ差の2着に敗れたが、翌17年も快進撃は続いた。
まずはこの年からGIに昇格となった大阪杯を勝利。続く天皇賞(春)は同レース連覇を3分12秒5というレコードで制覇。一転して天皇賞(秋)はどろどろの不良馬場を2分8秒3という時計で優勝。そしてラストランとなった有馬記念を逃げ切り、前年の雪辱を期すと共に有終の美を飾ってみせた。