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瀬古利彦が語るMGC成功の理由。
長期的な練習、1億円、一発勝負。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKyodo News
posted2020/05/05 11:45
中村匠吾は、まさにMGCによって脚光を浴びた選手の1人である。
日本人の記録はまだまだ伸びていく。
――オリンピックのメダルも見えてきますか。
「すぐには難しいですけど……、例えば一山選手は、このシューズを履き始めてたった3カ月で2時間20分29秒の記録を出したんですよ。名古屋でも久しぶりにいい走りを見させてもらいました。彼女のような選手が履きこなしていけば、さらに2分ぐらいは短縮が可能でしょう。コンディションが良ければ2時間16分台も出ると思います。
大迫選手も3年前の福岡国際では2時間7分19秒だったけど、今年の東京マラソンでは2時間5分29秒で、2分弱も速くなった。それは、このシューズを履きこなしてきたことが大きいと思います。
日本人の記録は、このシューズでまだまだ伸びていく。世界のトップに追いつくと簡単には言えないけど、今よりももっと差を詰めていくことは可能だと思います」
本当の成功は五輪で結果が出てから。
MGCは、東京五輪の選手選考においてマラソンへの注目度を増し、選手強化にもつながった。この取り組みは他競技からも注目され、今後、MGCにインスパイアされた代表選手の選考方式が生まれてくるかもしれない。
――パリ五輪に向けて、今後もMGCは継続していくというお考えですか。
「東京五輪の結果が出ないと本当の成功とは言えないので、まず結果を見ての判断になりますが、極端にやり方を変えていくことはないと思います。反省点を踏まえて、タイムの設定や選考レースを増やすといったことは出てくるでしょう。
今回は、東京五輪が決まり、そこにMGCの仕組みと1億円が乗っかって、三段重ねでうまくいった。それでマラソンを走れる選手を作り、選手層を厚くすることができた。それは今後も、どんな形であれ、続けていかないといけないと思っています」
(【後編】MGCは日本マラソンの何を変えたか。瀬古利彦が語る影響、箱根との関係。 を読む)