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今こそ、逆転のカープの真骨頂を。
石原慶幸の言葉、鈴木誠也の姿勢。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2020/05/01 20:00

今こそ、逆転のカープの真骨頂を。石原慶幸の言葉、鈴木誠也の姿勢。<Number Web> photograph by Kyodo News

2019年4月17日、石原の決勝打で巨人に勝利。苦しんでいたカープの、諦めない姿勢が際立った。

鈴木誠也「今の1日の方が大切」

 コロナ禍でも練習は続く。2日に一度、2班が与えられた時間は3時間もない。

 主砲の鈴木誠也は言う。

「開幕を気にしてもどんどん延びていくかもしれない。深く考えると疲れる。それよりも、今の1日の方が大切」

 フリー打撃ではセンター中心の打撃を徹底。気持ちよくさく越えを狙うのではなく、打球方向は7割超が左中間から右中間のエリア。高い意識の徹底がうかがえる。

 プロ入りから誰よりも練習量をこなして今のポジションまで上がってきた。試したいこと、取り入れたいもの、追い込みたい日もある。やることはいくらでもあるタイプだろう。ただ、現状を嘆いても何も生まれない。できる範囲内で最大級の実りを求める。開幕日すら決まっていないなら、シーズンでの目標を見るのではなく、足元をみつめればいい。やることは必ずある。

 すべては1つ1つの積み重ね。それがアスリートとしての可能性を高め、人としての深みとなる。反対に1日の怠慢がのちに大きなツケが来る。ときには自分を許すことも大切だろうが、緩みによって成長の歩みを止めることは、停滞ではなく、後退を招きかねない。

「今年はシーズンが開幕されなくても仕方がないと思っている」と覚悟する選手もいる。それでも、その上でやるべきことをやる。やるしかない。与えられた環境、条件を肯定してこそ前進する力も生まれる。

広島ナインが示してきたもの。

 あの日、石原が感じたチームの力は、今年から選手会長を務める田中広輔も感じている。チームをまとめることが難しい今も「選手たちが自覚を持ってやっていると信じている」と、仲間を信頼している。

 開幕日が決まらない中での調整は、ゴールの見えないマラソンを走っているようなものだろう。それでも選手は与えられた環境でプレーすることしかできない。

 プロ野球選手は特別ではない。だが、プロ野球選手が敗戦やケガ、挫折から強くなってきたように、アスリートの思考はときに学びとなる。現実を受け取る姿勢で、歩みの速度は変わる。下を向いてばかりいては、前進する歩みも鈍ってしまう。広島ナインが示してきた“行程”の持つ力が、その先に待つ未来を変える。

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