炎の一筆入魂BACK NUMBER
今こそ、逆転のカープの真骨頂を。
石原慶幸の言葉、鈴木誠也の姿勢。
posted2020/05/01 20:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
なんとなく気持ちが重たい日が続いている。コロナ禍での外出自粛による影響というよりも、目にする、耳にする、触れる批判的な言葉を消化するために無駄なエネルギーを使っているかのようだ。負の言霊が、心の鉛となっているような気がする。
他者だけでなく、自分もまた少なからず批判的になっているかもしれない。気持ちが弱まれば、言動にも影響する。ギスギスしたようなときこそ、前を向いて“肯定”する力が必要ではないか。
広島は全国への緊急事態宣言発令を機に、投手と野手をそれぞれ2班ずつに分けた4班を完全に分離させ、午前と午後の1勤1休をとる。
日本が得体の知れないウイルスと闘っている今、プロ野球の開幕はいつ、と議論できるまでに至っていない。
「プロ野球だけが特別ではない」
そんな声が飛んできそうだが、誰よりもそう強く感じていたのは選手たちだ。関東圏などで感染が広がりを見せていたころ「自分も感染しないか不安」、「野球をやっていていいのか」などの声が上がった。不安や恐怖、「野球=仕事」に対する戸惑いの声が聞かれた。
下を向いていれば、自然と気持ちも沈む。動こうにも、足取りも重たくなる。前に進むためにまずやらなければいけないことは、顔を上げることだろう。
決勝打を放った石原の言葉。
生活だけでなく、試合でもそう。1年前の今頃、広島は8連敗から8連勝して借金を完済した。連敗を止めて流れを変えたのは4月17日、巨人戦での逆転勝利だった。
8回裏に丸佳浩に勝ち越し2ランを食らった直後の9回表に追いつき、勝ち越し打を放った石原慶幸は振り返る。
「急に良くなることはない。とにかく自分たちのできることを、自分たちの野球をやろうとみんなで話していた。全員が一丸となって諦めないのがカープの野球だから」
諦めない姿勢で2018年まで3連覇。4位に終わった'19年も球団新記録となる12度のサヨナラ勝利を記録した。目の前の可能性を信じて前を向く者に、幸運は訪れるのかもしれない。