プロ野球亭日乗BACK NUMBER
松井秀喜、5月1日プロ一軍デビュー。
507本塁打、2643安打への衝撃と障壁。
posted2020/05/01 18:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
ライナーで伸びた打球がセンターバックスクリーンからややライト寄りのフェンス上部を直撃した。
今から27年前、1993年5月1日の東京ドームでの巨人対ヤクルト戦だ。この日、一軍デビューを飾った巨人・松井秀喜外野手が、第2打席で待望のプロ初安打となる中越え二塁打を放った。
「会心の当たりだったと思います」
試合後のお立ち台。初々しい表情でヒーロー・松井が振り返ったのは、5回無死二塁の打席だった。
マウンドは当時のヤクルトのエース・西村龍次投手。初球のインコース真っ直ぐを見送った2球目だ。同じような真っ直ぐが少し甘く入ったところを、ゴジラのバットがガツンと捕らえた。
プロ初安打と初打点は余裕のスタンディングダブルだった。
キャンプ地・宮崎はホットスポットに。
「1日も早くここでやりたかったし、ファームに落とされた悔しさを忘れずに毎日やっていました」
お立ち台の松井はあえてそっけない様子でこう話したが、この言葉の裏側には松井が本当のプロ野球選手となるために歩んだ厳しい道のりが秘められていたのである。
筆者が巨人・松井のバッティングを初めて見たのは、この年の2月1日、宮崎キャンプでのフリー打撃だった。
長嶋茂雄監督が巨人に復帰した1年目で、話題の2人が揃ったことで、この年のキャンプ地・宮崎はたちまちホットスポットとなった。
球場へと続く国道のバイパスでは車の大渋滞が起こり、当時の宮崎市営球場(現ひむかスタジアム)の周囲はスタンドから溢れた人々でごった返していた。