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クロカンスキーの鉄人・石田正子は
新型コロナにも世界の壁にも屈せず。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2020/04/12 08:00
北海道美幌町出身の石田正子(JR北海道スキー部)。昨年11月のW杯の10kmクラシカルでは9位を獲得した。
日本のチームが資金不足に陥ると……。
日本の競技環境ゆえに、困難に直面したこともある。
一例はソチ五輪後の2014-2015シーズン。日本のクロスカントリースキーチームは、資金不足から、ワールドカップ参戦もままならない状態に陥った。
石田はどうしたか。
「スキークラシック」というロングディスタンス(長距離)の大会を各国で行なうシリーズに参加するノルウェーのチームと契約し、海外での活動を実現したのである。
このシリーズは高い人気を誇り、五輪金メダリストなど錚々たる顔ぶれが参加している。
「日本にいてもしようがないので、ノルウェーのナショナルチームの下部組織で教えているコーチに、『ロングディスタンスやってみたいけど、知っているところない?』 と聞いたら、『ここはどうだ』と教えてくれて」
テスト的に加入し好成績をあげ、正式にチームの一員となった。シリーズ戦に参加しつつ、ワールドカップにも参戦する道を自ら拓いたのである。
クロスカントリースキーの地位を引き上げたい。
昨シーズンもフィンランド・ルカのワールドカップで9位になるなど、変わらず、日本のエースとして戦ってきた。
不本意な思いもある。クロスカントリースキーではきわめて重要な要素となるワックスを巡る問題だ。スキー板に塗布するが、ワックスの取捨選択でパフォーマンスは大きく異なる。
「メインになるワックスマンが転んで骨折したんですね。それでずっと大会に来ることができなかった。コーチたちも苦労したけどうまくいかない部分がありましたね」
だから次へ進むには、万全な態勢を、と願う。
かねてから、石田はクロスカントリースキーの地位を引き上げたいと語ってきた。
変わらぬ思いを抱き、成長する自分を楽しみに、今日まで進んできた。数々の困難をくぐりぬけ、競技環境を自ら築いてきた。
でも自身を語る言葉と表情は、飄々としている。肩肘張らない姿勢は、クロスカントリースキーへの愛着と、だから生まれるエネルギーをあらためて示すようだった。