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クロカンスキーの鉄人・石田正子は
新型コロナにも世界の壁にも屈せず。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2020/04/12 08:00
北海道美幌町出身の石田正子(JR北海道スキー部)。昨年11月のW杯の10kmクラシカルでは9位を獲得した。
北欧では国内大会がライブ中継される。
その強さは、これまでの足取りから培われているように思えた。
石田は、まぎれもなく、第一人者である。
クロスカントリースキーにおける日本のエースとして、長年、過ごしてきた。
石田について触れる前に、その前提として、クロスカントリースキーの競技環境を考慮しなければならない。
正直、日本では決して注目度の高い競技ではない。ただ、ヨーロッパなどでは異なる。
特に北欧では国際大会はむろんのこと、国内の大会がライブで中継され、競技会場には多くの観客が訪れる。日本にそうした土壌はない。
それは競技に直結する部分でも差となって表れる。強豪国は、専用ジェット機で遠征する、あるいは多数のスキー板を並べた大型トラックを持ち、大陸を移動する。チームを支えるスタッフは数十名を数える。
世界の壁がきわめて高い競技。
日本は選手へのサポート面で大きく下回る。クロスカントリースキーは、ある意味、チーム戦でもある。
例えば、大会の行なわれるコースの雪面のコンディションに適したワックスをスキー板に施さなければ勝負にならない。でも日本は予算の違いから、合宿など強化に充てられる費用も差がある。
つまりは、世界の壁がきわめて高い競技であることを意味する。
その中で石田は戦ってきた。
競技のための費用が足りないと思えば、企業に自らスポンサーの依頼をしたことがある。海外のコーチに、辞書をひきながら、「いいコーチが私には必要です。いい人を紹介してください」と手紙を書いたこともある。