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巨人の極端な阪神“ボーアシフト”。
効果を清原、松井の打撃論から考察。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/03/13 20:30
「バースの再来」、「バース2世」とも称されるボーア。阪神ファンからの期待は大きいが“シフト”をかいくぐれるか。
“ボーアシフト”のもう1つの狙い。
このシフトに対して7日の日本ハム戦ではシフトの逆をついた流し打ちで三塁の定位置付近を抜ける左前安打を放ったボーアはこう胸をはったという。
「シフトは今の段階では気にしていないけど、逆方向にも強い打球を打てるんだ、というスイングをした」
そして巨人戦では打席で2度、バントの仕草をしてもいる。対策への対策をしっかり見せてきたのだ。
ただ、実はそのボーアの見せた反応にこそ、“ボーアシフト”のもう1つの狙いがあるはずなのである。
原辰徳、清原和博、松井秀喜の打撃論。
「バッティングというのは対応。投手の投げてきたボールに対していかに対応するかだけど、忘れてはいけないのは自分の型をしっかりと持った中でどう対応していくかなんです。
自分の型を崩して対応すると、そのときは結果は出るかもしれないけど、長い目で見ていると打撃を崩していく原因になる。だからこそどんな状況でも自分の打撃の中でいかに対応できるようになれるか。そこが大事になる」
以前に原監督から聞いた打撃論だ。
もう1つ、巨人時代の清原和博さんと松井秀喜さんとのこんな逸話がある。
「僕は10対0で勝っている9回の最終打席なら多少、ボール気味の球でもホームランを狙いにいって強引に振る。でもそこでフォアボールを選ぶのが松井なんです」
こう話していたのは清原さんだが、後にこのことを松井さんにぶつけたことがある。すると松井さんからはこんな答えが返ってきた。
「だってそこでボール球を強引にスイングしたら、バッティングを狂わすきっかけになるかもしれないじゃないですか」