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パス1000本超もメッシの負荷が……。
セティエンはバルサを再建できるか。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2020/02/24 11:40
セティエン監督就任後、サッカースタイルは明らかに変わったが内容は劇的に改善したと言えない。バルサの混迷期はさらに続くのか。
崩しを共有できず1000本超のパス。
初陣のラ・リーガ第20節グラナダ戦で1000本以上のパスをつないでみせたように、ボールを動かそうという意図は見て取れる。ところがいかんせん、パスはつなげども陣地はなかなか前に進まない。選手間の距離が離れすぎているから、理想とする綺麗な菱形も三角形もピッチ上に描けず、眠気を誘うような各駅停車のパスがどうしても多くなる。
そして、崩しのイメージを共有できないまま、苦し紛れに出したパスを中盤でインターセプトされ、ショートカウンターを浴びるのだ。
第23節のベティス戦、左SBのジュニオル・フィルポからMFアルトゥーロ・ビダルへのパスがずれたところを突かれ、ナビル・フェキルに強烈な一撃を食らったシーンが象徴的だろう。
ボールを握り続けるポゼッション・スタイルはセティエンの真骨頂であり、それはバルサの伝統的なフィロソフィーと濃密に通じる。両者の相性は悪くない。性格も生活習慣も趣味も、何もかもが違う2人を無理やりくっつけたわけではないのだ。
だとすれば、この停滞感はどこからくるのだろう。セティエンのバルサに胸が高鳴らないのはなぜだろう。
足りない時間と、FWの頭数。
「今は選手たちのことを知る期間。彼らに何ができるのかを確認しているところだ」
セティエン本人がそう話したのは、格下のレバンテに苦しみながらも2-1の勝利を収めた直後だった(第22節)。たしかに、たとえ方向性は合致していても、新たな指揮官がその流儀をチームに落とし込み、選手がそれを頭ではなく身体で理解するには、もう少し時間が必要なのかもしれない。
ただし、ここはラスパルマスでもベティスでもなく、バルサなのだ。首脳陣もサポーターも、それほど気長には待ってくれないだろう。
足りないのは時間だけでなく、FWの頭数も、だ。
17歳の新星アンス・ファティは期待以上によくやっている。しかし、主砲ルイス・スアレスが膝を痛めて長期離脱となったのに続き、怪我から復帰間近と伝えられていたウスマン・デンベレが、またしてもハムストリングを負傷。今シーズン絶望となってしまった。
デンベレの復帰を見越して、カンテラーノのカルレス・ペレスもこの冬、ローマへレンタルに出している。セティエンにしてみれば、大誤算に違いない。
これで一層大きくなったのが、リオネル・メッシにかかる負荷だ。