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パス1000本超もメッシの負荷が……。
セティエンはバルサを再建できるか。
posted2020/02/24 11:40
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
一つ星でも二つ星でもない。欲しいのは最高峰の「三つ星」なのだ。
これまでのシェフ(エルネスト・バルベルデ)に切り盛りを任せておけば、刺激的な料理こそ生み出さないけれど、毎年コンスタントに一つ星(ラ・リーガもしくはコパ・デル・レイのタイトル)はもたらしてくれたかもしれない。
だが、彼に厨房を託したこの2年は、三つ星(チャンピオンズリーグ制覇)に手が届かなかったばかりか、ここぞというところで続けざまに塩と砂糖を間違えるような大失態(歴史的な大逆転負け)まで犯し、少しずつ客足(サポーターの支持)も遠のきつつあった。
だから、オーナーは思い切ってシェフを代えた。
求めたのはオリジナリティー。
すなわち、伝統の味(ポゼッション・フットボール)だった。この一流レストラン(バルセロナ)で修業を積んだOBシェフ(シャビ)の引き抜きこそ失敗したが、新たに迎えたシェフ(キケ・セティエン)も、これまで町の小さな食堂(ラスパルマスやベティス)しか切り盛りしたことがなかったとはいえ、その手腕には定評があった。
なにより、今は亡き創業者(ヨハン・クライフ)の理念に心酔し、高い志を持ったベテランシェフは、伝統の味を取り戻すうえでうってつけの人材のようにも思えた。
国王杯でビルバオ相手に敗戦。
しかし──。テレビドラマのように話はとんとん拍子に運ばない。
セティエンがバルサの指揮を執ってから、ひと月あまりの時間が流れた。就任以降の公式戦の成績は、6勝2敗(2月19日時点)。その間にラ・リーガでは宿敵レアル・マドリーに首位の座を明け渡し、コパ・デル・レイでは準々決勝でアスレティック・ビルバオに苦杯を舐めている。
「結果よりも、はるかに内容が大切だ」
そう言い放つ熱烈なクライフ信者はしかし、結果だけでなく、まだ一度たりともサポーターを満足させるような料理、いやパフォーマンスを提供してくれてはいないのだ。