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メジャーリーグに走った激震の正体。
「サイン盗み」はなぜアンフェアか。

posted2020/02/13 07:00

 
メジャーリーグに走った激震の正体。「サイン盗み」はなぜアンフェアか。<Number Web> photograph by Getty Images

2017年のワールドシリーズ第3戦、アストロズ戦に先発したダルビッシュは2回途中4失点で降板。「球種を読まれた」とも報じられていたが……。

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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 先日、前アストロズ監督のA・J・ヒンチ氏がMLBネットワークのインタビューに答えた。1月以降に同氏を含む3人の監督と1人のGMが職を解かれて以降、初めての肉声であった。

「私はリーダーでした。私の下で起こったこと。私には終わらせる責任があった。止めていればよかった。もっと何かができていたはず」

 2017から'18年にかけて、アストロズが相手バッテリーのサインを盗み、ベンチに伝達。ベンチの選手が変化球ならバケツをたたくなど、音で打席にいる仲間に伝える手法だった。

 当時在籍した選手による告発を受け、MLB機構が調査。まずジェフ・ルノーGMとヒンチ監督の1年間の職務停止と、今年度、来年度のドラフト1、2巡目指名権の剥奪、500万ドルの罰金処分を科した。それを受け、アストロズはすぐさまGMと監督を解任した。

 今回、ヒンチ氏が改めて口にした内容も、MLBの報告書も、一連のサイン盗みが組織としての命令ではなく「選手主導、選手実行」だったことで一致している。つまり、ヒンチ監督はチーム内で何が行われていたか知ってはいたが、指示、主導したわけではない。その点を認めた上で監督責任を問われたのだ。

なぜ球種のサインを盗むのか。

 必然的に、処分の炎はこの2人では収まらなかった。

 2017年のベンチコーチで、首脳陣の中ではただ1人、この企みに積極的に関与していたと認定されたアレックス・コーラ監督を、レッドソックスは先手を打って解任。また、当時の選手でメッツの監督に就いたばかりのカルロス・ベルトランも、1試合も指揮を執ることなく職を追われた。

 そもそも、なぜ球種のサインを盗もうとするのか。それは「次に何がくるのか」は打者が最もほしい情報だからである。メジャーリーグ最後の4割打者、テッド・ウィリアムスはこんな言葉を残している。

「投手は捕手とのサインを交換してから投げ始める。つまり、投球動作に入ったとき、僕に何を投げてくるかは決まっているのだ」

 野球を知っている人なら当たり前のことだが、当たり前の中にこそ真理は詰まっている。ウィリアムスは投球フォームにくせを見つけようと研究した。あるいは配球を分析するということも「正解」に近づく手段の一つだろう。

【次ページ】 2017年、ダルビッシュの言葉。

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