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トルシエが見た西野朗代表監督。
「西野はタイの選手を劇的に変えた」
posted2020/01/25 11:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
AFLO
タイとベトナム。東南アジアのサッカーをリードするふたつの国は、メコン川流域のライバルでもある。自らもベトナム・ハノイを拠点とするU19ベトナム代表監督、フィリップ・トルシエはU23・アジア選手権での両国をどう見たのか。とりわけタイのA代表監督も兼任する西野朗の仕事をどう評価しているのか。トルシエに聞いた。
――それでは今回は、U23選手権におけるメコンの2か国、タイとベトナムについて伺います。開催国のタイが勝利を得たのは初戦のバーレーン戦(5対0)のみでしたが、初のベスト8進出を成し遂げるなどいいイメージを残しました。対してベトナムは、2年前の中国大会では決勝まで進みましたが、今回は地味にグループリーグで敗退した印象です。両国の今大会をどう見ていますか?
「ふたつの国を見たとき、ここ数年の結果についてはベトナムが上回っていると言えるだろう。というのもベトナムはU23選手権前回大会のファイナリストだからだ。さらに言うと、『スズキカップ(=東南アジア選手権。2018年)』の覇者でもある。『シーゲームス(=東南アジア競技大会。アジア大会の東南アジア版。2019年11~12月)』でも男女ともに優勝した。つまり今日の東南アジアにおいて、ベトナムは素晴らしい結果を得ている、ということになる」
「ベトナムの上昇の方がタイを少し上回っている」
「それは代表監督である朴恒緒(パク・ハンソ)の優れたマネジメントの功績であるといえる。
同時に、現在のタイ代表の結果は西野のマネジメントによるもの、とハッキリ言える。両国の結果は、それぞれの監督のマネジメントと密接に結びついているからだ。
両国のサッカーのポテンシャルはほとんど同レベルにある。選手のクオリティも変わらない。違いといえばタイは現在上昇局面にあるが、ベトナムの上昇の方がタイを少し上回っていることぐらいだ。ワールドカップ予選に関しても、両国は同じグループで激しく争っている(=グループG、1位ベトナム[勝ち点11]、2位マレーシア[同9]、3位タイ[同8]、4位UAE[同6]、5位インドネシア[同0]の順)。
つまり両国の間に大きな違いはない。
それが東南アジアの現実であり、ベトナムが今大会でいい結果を得られなかったのは、選手たちが『シーゲームス』の直後で少し疲れていたから、ということだろう」