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トルシエが見た西野朗代表監督。
「西野はタイの選手を劇的に変えた」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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posted2020/01/25 11:30

トルシエが見た西野朗代表監督。「西野はタイの選手を劇的に変えた」<Number Web> photograph by AFLO

タイのU23代表監督とA代表の両方を指揮する西野朗監督。森保一日本代表監督との対決も楽しみだが……。

「西野は私同様に彼らの殻を破りたかったのだろう」

――西野は選手たちに自信を持つように言い続けると同時に、彼らにピッチ上で自分を表現するようにも求めています。あなたが日本の若い世代に対して、20年前にそれを求めたように……。

「それこそ私が今まさに述べていることで……東南アジアのサッカーはコレクティブだ。選手たちは規律を持っており、指導者の言葉をよく聴く。西野は私同様に彼らの殻を破りたかったのだろう。

 選手がそれぞれに自分のアイデンティティを持つようにする。自分で判断し、自分で態度を決める。自分の意見を持って自身を表現する。

 監督の役割は、選手を1つにまとめることだ。しかしそれ以前に、選手が固有のアイデンティティを持つこと、コミュニケーションをとって全力を出し切ることで、チームは確立される。

 今日の日本でも同じことがいえる。この大会の日本は、選手たちが全力でプレーせず、個の力もアイデンティティも欠いていた。規律に溢れてはいたが、個として全力を尽くすことと野心を欠いていた。そのうえプレーがモノトーンで一本調子だった。それがグループリーグを突破できなかった理由だ。

 サウジ戦の日本を見ると反省すべき点が多々ある。あれだけゲームを支配しながら勝つことができなかった。

 昨日のサウジの戦いぶりを見れば、日本はもっとやれたはずだった。選手たちがもっと精力を傾けていたら、彼らが決意と野心を持って戦っていたら、準決勝に進んでいたのはサウジではなく日本だった。決意とアグレッシブさの欠如、とりわけ野心の欠如が――ただ野心さえ持っていれば、日本は存在感を示すことができた」

「次は、その結果を維持しなければならない」

――ベトナムとタイに話を戻しますが、朴恒緒が現在のベトナム代表を率いて3年(代表監督として過去2回指揮を執っているが)が経つのに対し、西野はタイ代表監督に就任してまだ数カ月です。両国の近年の結果の違いは、ふたりの監督の就任期間の違いによるものと言えるのでしょうか?

「その通りで、選手に対する直接的なマネジメントをうまく適用すれば、即時に結果を得ることができる。だから西野はすぐに結果を得られた。朴恒緒も西野同様に、就任直後からまったく時間をかけずに結果を得ることができた。

 次は……その結果を維持しなければならない。より難しいのは、維持し続けることだからだ。朴が優れているのは、この3年間にわたり優れた結果を出し続けていることだ。

 だから西野も要求に応え続けることだ。野心を持ち続けながら結果を出し続けるのは簡単ではない。厳しいチャレンジだ」

【次ページ】 「最重要の仕事はタイのW杯アジア最終予選進出」

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